最近のFRB高官発言とドル円相場

市川レポート(No.596)最近のFRB高官発言とドル円相場

  • このところパウエル議長ら複数のFRB高官から米利上げ継続に慎重ともとれる発言が相次いでいる。
  • そのため足元ではFF金利先物市場が織り込む利上げ確率が低下し、米長期金利も低下傾向に。
  • ただ、来年6月に利上げ終了とみていたため違和感なし、ドル円は目先110円~115円で推移か。

このところパウエル議長ら複数のFRB高官から米利上げ継続に慎重ともとれる発言が相次いでいる

このところ、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官から、利上げ継続に慎重ともとれる発言が相次いでいます。パウエルFRB議長は11月14日、米テキサス州ダラスで講演し、海外景気の減速や、米財政刺激効果の剥落、米利上げが時間差をもって経済に与える影響を、潜在的な課題として列挙しました。そして、「あとどれくらい利上げをするか、今後の利上げペースについて考えなければならない」と述べました。

また、米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は11月15日、スペインの首都マドリードで開催された講演で、「(景気を過熱も冷やしもしない)中立金利からあまりに遠く離れているとは思わない」と指摘しました。さらに、クラリダFRB副議長は11月16日、米CNBCのインタビューのなかで、米政策金利は「中立水準に近づいている」、「一部では減速しつつある世界経済も考慮に入れる必要がある」と発言しました。

そのため足元ではFF金利先物市場が織り込む利上げ確率が低下し、米長期金利も低下傾向に

FRB高官からのハト派的とも受け止められる発言は、今週に入ってからも続きました。ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁は11月19日、米ニューヨーク州ブロンクスで行われたイベントで、「われわれは若干の(somewhat)利上げを行う可能性が高い」と述べました。なお、パウエル議長、ボスティック総裁、クラリダ副議長、ウィリアムズ総裁は、FOMCでの投票権を有しています(図表1)。

これら一連の発言を受け、市場では利上げペースが鈍化するのではないかとの観測が広がりました。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む利上げ確率をみると、足元で顕著に低下している様子が確認できます(図表2)。また、米国10年国債利回りは、11月7日には一時3.25%近くまで上昇していましたが、週明け19日には3.05%台まで低下しています。

ただ、来年6月に利上げ終了とみていたため違和感なし、ドル円は目先110円~115円で推移か

ドル円は11月12日に一時1ドル=114円21銭水準をつけていましたが、米長期金利の低下を背景に、週明け19日には112円40銭台までドル安・円高が進みました。ただ、11月9日付レポート「11月米中間選挙とFOMC後のドル円相場展望」で解説した通り、米利上げの打ち止めが近づくなか、米長期金利上昇の余地は小さく、ドル高の勢いはそれほど強くないと考えていたため、FRB高官発言と市場の反応にそれほど違和感はありません。

弊社では、米利上げについて、年内は12月、来年は3月と6月に実施され、そこでいったん打ち止めと予想しています。また、米国の景気循環はピークアウトしつつあるも、一気にボトムに向かう展開ではないとみています。そのためドル円は、ドル高、ドル安、いずれの方向にも大きくは振れにくく、目先は110円から115円のレンジ内で推移する可能性が高いと思われます。

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(2018年11月20日)

 

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