グローバルな金融環境を確認する
市川レポート(No.583)グローバルな金融環境を確認する
- 世界の株式市場全体が混乱している状況ではなく、10月の日経平均の2ケタの下げは行き過ぎ。
- 世界の為替市場にも混乱なく、また年初ほど円高ではないのに、足元の日経平均の下げは大きい。
- 米長期金利や商品市場の動きをみても日経平均の突出した下落を正当化できる要素は少ない。
世界の株式市場全体が混乱している状況ではなく、10月の日経平均の2ケタの下げは行き過ぎ
今回のレポートでは、改めてグローバルな金融環境を確認します。10月に入り、主要国の株式市場は調整色を強めました。主要株価指数について、9月28日から10月26日までの騰落率をみると、図表1の通りになります。財政問題を抱えるイタリアのFTSE MIB指数、米制裁関税で景気の先行きが懸念される中国の上海総合指数、欧州連合(EU)との合意なき離脱が懸念される英国のFTSE100指数などは、そろって大きく下げています。
こうしたなか、日経平均株価は2ケタ下落し、これらの指数の下落率を上回りました。日本国内には株価に深刻な影響を与える問題もなく、2ケタの下げは行き過ぎのように思われます。なお、ブラジルボベスパ指数は、大統領選で構造改革推進派のボルソナロ氏優勢の流れを好感して上昇しており、フィリピン総合指数やジャカルタ総合指数の下げも小幅にとどまっていることから、世界の株式市場全体が混乱している状況ではありません。
世界の為替市場にも混乱なく、また年初ほど円高ではないのに、足元の日経平均の下げは大きい
次に為替市場の動きを確認します。主要通貨について、9月28日から10月26日までの対米ドル騰落率をみると、図表2の通りになります。今年の夏に対米ドルで急落したアルゼンチンペソやトルコリラは、上昇に転じています。アジア通貨や、英ポンド、ユーロは対米ドルで下落していますが、下落率は1~2%程度です。少なくとも、円全面高とはなっておらず、世界の為替市場全体が混乱している状況ではありません。
なお、日経平均株価とドル円の動きに注目してみると、日経平均株価が1月23日に年初来高値(当時)をつけた後、約3,506円下げて3月23日に年初来安値をつけるまで、ドル円は約5円57銭のドル安・円高が進行しました。しかしながら、今回、日経平均株価が10月2日に年初来高値をつけた後、10月26日に約3,086円下げるまで、ドル円は約1円74銭のドル安・円高の進行にとどまっています。そのため、円相場からみても、足元の日経平均株価は下げ過ぎのように見受けられます。
米長期金利や商品市場の動きをみても日経平均の突出した下落を正当化できる要素は少ない
なお、米10年国債利回りは、10月3日に3.1%を超えて上昇し、9日には一時3.26%付近まで水準を切り上げました。ただ、26日には3.1%を割り込んでおり、すでに上昇の動きは一服しています。また、ロンドン金属取引所(LME)で取引されている6種類の工業用金属で構成されるLMEX指数は、10月に3,000ポイントの定着に至らず、足元では2,900ポイント台で推移しています。ただ、8月15日につけた年初来安値の2,819.60ポイントは上回っています。
ここまで、グローバルな金融環境を俯瞰しましたが、少なくともリスクオフ(回避)一色ではないことが分かります。10月の世界的な株安のきっかけとなった米長期金利の上昇は収束しており、商品需要も急速に冷え込んでいる訳ではありません。主要株価指数や主要通貨に加え、このような米長期金利や商品市場の動きをみても、日経平均株価の世界的に突出した下落を正当化できる要素は少ないように思われます。
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