目先の市場リスクを総点検する

2018/10/23

市川レポート(No.580)目先の市場リスクを総点検する

  • 米中の関税引き上げは、中国経済への影響が最も大きいが、深刻な景気後退は見込んでいない。
  • 米中間選挙は、ねじれ議会でもリスクオフは一時的、伊財政問題とBREXITによる混乱も回避へ。
  • 米サウジ関係も深刻には悪化せず、一連のリスクは消化へ、ただ市場の懸念緩和に時間は必要。

米中の関税引き上げは、中国経済への影響が最も大きいが、深刻な景気後退は見込んでいない

今回のレポートでは、足元で意識されている市場リスクを総点検します。具体的には、①米中関税引き上げの影響、②米中間選挙の行方、③イタリアの財政問題、④BREXITの展望、⑤米国とサウジアラビアの関係悪化観測、です。まず①について、米国が中国からの輸入品2,670億ドル分に追加課税する制裁関税第4弾を発動した場合、各国・地域の実質GDP成長率への影響は、図表1のように推計されます。

ユーロ圏の実質GDP成長率は0.08%の低下にとどまり、ほぼ影響なしと考えられます。日本は0.21%、米国は0.26%、それぞれ押し下げられますが、政策対応などで十分吸収可能です。中国への影響が最も懸念されますが、当局は財政政策を中心として景気下振れに対処すると思われます。弊社では中国の実質GDP成長率について、2018年は前年比+6.6%、2019年は同+6.3%と予想しており、中国の深刻な景気後退は見込んでいません。

米中間選挙は、ねじれ議会でもリスクオフは一時的、伊財政問題とBREXITによる混乱も回避へ

②の米中間選挙については、9月19日付レポート「米中間選挙の焦点と予想される市場の反応」で解説した通り、ねじれ議会は、ほぼコンセンサスとなりつつあり、市場のリスクオフ(回避)の反応は一時的と思われます。③のイタリア財政問題については、10月3日付レポート「イタリア財政問題の要点整理」で説明していますが、最終的にはイタリアと欧州連合(EU)が歩み寄り、この問題が金融市場を動揺させる恐れは小さいとみています。

④のBREXITについては、英国領北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドとの国境の扱いが問題となっています(図表2)。英国とEUは、厳しい国境管理を避けることで一致していますが、英国内での調整が難航しており、合意なき離脱が懸念されます。しかしながら、このところEU側にアイルランド問題を見直す融和的な態度がみられており、弊社では英国とEUは最終的に離脱交渉で合意すると考えています。

米サウジ関係も深刻には悪化せず、一連のリスクは消化へ、ただ市場の懸念緩和に時間は必要

⑤の米国とサウジアラビアの関係については、市場に警戒感が広がっています。両国の関係悪化は中東情勢の不安定化要因であり、原油価格の急騰による金融市場の混乱や実体経済への影響が連想されます。ただ、米国にしてみれば、原油高は避けたいという思惑もあり、また、イランの影響力抑止のための連携は、米国とサウジアラビア双方にとってメリットがあります。そのため、両国の関係が深刻に悪化する事態には至らないと思われます。

以上、5つのリスクを検証しましたが、いずれも、最終的には金融市場や世界経済に深刻なダメージを与えることなく、消化されていくと予想しています。ただ、主要国の株価は依然として不安定な動きを続けています。いずれのリスクも、市場や実体経済に大きな混乱を与え得るものなので、すぐに楽観できないのも仕方がありません。そのため、市場の懸念が和らぐまで、今しばらく時間が必要とみています。

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(2018年10月23日)

 

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