2018年前半の日本株~上昇銘柄と下落銘柄にみる相場のテーマ

 市川レポート(No.528)2018年前半の日本株~上昇銘柄と下落銘柄にみる相場のテーマ

  • 日経平均の構成企業のうち、年初から株価が上昇したのは57社、下落したのは167社に達した。
  • 業種別では、内需に比べて外需の低調さが目立ち、米中貿易摩擦問題が影響したと考えられる。
  • 投資家の保守的な動きが当面予想されるが、貿易摩擦懸念後退なら出遅れ銘柄の巻き戻しも。

日経平均の構成企業のうち、年初から株価が上昇したのは57社、下落したのは167社に達した

今回のレポートでは、2018年前半の日本株の動きを振り返り、上昇した銘柄と下落した銘柄の顔ぶれから、相場のテーマを探ります。検証の対象は、日経平均株価と、それを構成する225社です。まず、日経平均株価全体について、2017年12月29日を基準とした2018年7月6日までの騰落率は-4.3%でした。日経平均株価は年初、米長期金利上昇を嫌気して、大きく下落しましたが、その後も上値の重い展開が続いています。

日経平均株価を構成する225社のうち、年初から株価が上昇した企業は57社と、全体の約25%にとどまりました。これに対し、下落した企業は167社と、全体の約75%に達しています(株価が変わらなかった企業は1社)。上昇率の大きい銘柄をみると、医薬品が目立ちますが、これは開発品への売上期待など、個別企業の好材料が重なったことによるものとみられます(図表1)。

業種別では、内需に比べて外需の低調さが目立ち、米中貿易摩擦問題が影響したと考えられる

次に、日経平均株価を構成する企業を、東証33業種の分類に基づき、業種毎の動きを確認します。年初から株価が上昇した企業の割合が5割超の業種は、医薬品、石油・石炭製品、電気・ガス業、陸運業などで、内需が目立ちます(図表2)。石油・石炭製品は、原油高が追い風になったと考えられます。また、電気・ガス業は、もともと景気に左右されにくい業種ですが、2016年、2017年とパフォーマンスが低迷した反動もあると思われます。

一方、下落した企業の割合が5割超の業種は、鉄鋼、非鉄金属、機械、輸送用機器などで、外需が目立ちます。米中貿易摩擦問題が大きく影響したとみられ、鉄鋼に分類される5社のうち、年初から株価が下落しているのは4社、非鉄金属は10社すべて、機械は15社のうち14社となっています。また、米国が自動車の輸入関税を引き上げる恐れもあることから、輸送用機器は13社のうち12社の株価が下落しています。

投資家の保守的な動きが当面予想されるが、貿易摩擦懸念後退なら出遅れ銘柄の巻き戻しも

日経平均株価を構成する225社の株価純資産倍率(PBR)をみると、1倍が2社、1倍を下回ったのは78社、1倍を上回ったのは145社でした。さらに、1倍を下回った78社のうち、年初から株価が上昇した企業の割合は11.5%、下落は88.5%でした。一方、1倍を上回った145社のうち、株価上昇企業の割合は31.7%、下落は67.6%、変わらずは0.7%でした。つまり、バリュー株よりもグロース株の方が幾分優位と考えられます。

日経平均株価の構成銘柄について、年前半の動きをみると、リスクを抑制しつつ、個別企業の好材料を物色する投資家の様子がうかがえます。そのため、米中貿易摩擦問題が市場の焦点となっている間は、外需より内需、バリューよりグロースが選好されやすく、好材料企業を物色する保守的な動きが続くと予想されます。ただ、米中貿易摩擦問題に対する懸念が和らげば、外需やバリューの巻き戻しという展開も、考慮しておく必要があるように思われます。

 

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(2018年7月9日)

 

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