日本株を見通す上で考慮すべき材料

市川レポート(No.450)日本株を見通す上で考慮すべき材料

  • これまでの株高要因に変化はなく、日経平均株価の22,000円割れは、ポジション調整によるもの。
  • ポジション調整は、海外投機筋による先物の売りが中心とみられ、裁定買いの解消で現物も下落。
  • 海外勢の現物買いは継続、先物売り一巡なら日本株は安定へ、来期の企業業績も見通し良好。

 

これまでの株高要因に変化はなく、日経平均株価の22,000円割れは、ポジション調整によるもの

 

日経平均株価は、11月9日の取引時間中に23,000円台を上抜け、一時23,382円15銭の高値をつけました。しかしながら、その後は下落に転じ、11月16日の寄り付き直後に22,000円台を割り込み、21,972円34銭の安値をつけました。このように、6営業日の値幅が1,400円を超えるなど、足元の日経平均株価にはやや不安定な動きがみられます。そこで今回は、日本株の今後を見通す上で、考慮すべき材料を整理します。

日本株は9月上旬以降、大幅に上昇しましたが、内部要因としては、①好調な決算、②政局の安定、が挙げられます。また外部要因としては、③世界的な景気回復、④円相場の安定、⑤米税制改革の進展期待、⑥北朝鮮リスクの後退、が挙げられます。11月9日以降、これらの要因に変化はないことから、日経平均株価の下げは、いわゆるポジション調整と推測されます。

 

ポジション調整は、海外投機筋による先物の売りが中心とみられ、裁定買いの解消で現物も下落

 

目先の材料としては、引き続き海外投資家の動向に注意が必要です。海外投資家は11月第2週(11月6日から10日)に、日経225先物の約1,590億円の売り越しと、TOPIX先物の約631億円の買い越しを併せ、約959億円の先物を売り越しました(図表1)。これは海外の投機筋が、日本企業の決算一巡を機に、9月以降に積み上げた先物の買いポジションを、いったん整理した動きと考えられます。

なお、先物に買いが膨らみ、先物の価格が現物に比べ高くなった場合、先物を売って、現物を買う「裁定買い」取引が行われます。この取引における現物買いの残高を「裁定買い残」といい、先物が買われる過程で「裁定買い残」は増加します。一方、前述のようにポジション調整などで先物が売られ、先物の価格が現物に比べ安くなった場合、「裁定買い取引」は、先物買いと現物売りによって解消されるため、現物買いの残高である「裁定買い残」は減少します。これが先物主導で現物が下落する背景です。

 

海外勢の現物買いは継続、先物売り一巡なら日本株は安定へ、来期の企業業績も見通し良好

 

なお、海外投資家は同じ11月第2週で現物株を約671億円買い越しており、このところ金額は減ったものの、これで7週連続の買い越しとなりました(図表2)。現物を購入する海外投資家は、年金など長期投資家が主体とみられ、日本株投資を続けている様子が窺えます。そのため、海外投機筋による先物ポジションの調整が一服すれば、「裁定買い取引」の解消に伴う現物売りも一服し、日本株の値動きは次第に安定するものと思われます。

長期の材料としては、2018年度の企業業績と、それを左右する米中経済の動向が重要です。弊社は、調査対象のコアリサーチ・ユニバース224銘柄(除く金融)の経常利益について、2017年度は前年度比+15.1%、2018年度は同+8.3%と予想しています。伸び率はやや鈍化するものの、来年度も増益見通しです。また、弊社は2018年の実質GDP成長率について、米国は前年比+2.3%、中国は同+6.5%の安定水準を見込んでおり、いずれも景気後退リスクは小さいと考えています。

 

171117図表

(2017年11月17日)

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