トランプ政権の混乱と相場の変調
市川レポート(No.429)トランプ政権の混乱と相場の変調
- トランプ政権は幹部退任が相次ぎ、2つの助言組織も解散、混乱が続けば市場の警戒も強まろう。
- 米予算審議は遅れる見通しとなり、米景気対策の時期と規模、経済成長の見通しを下方修正。
- ただ最終的に景気対策は実施され債務上限は引き上げへ、株式など弱気相場入りは想定せず。
トランプ政権は幹部退任が相次ぎ、2つの助言組織も解散、混乱が続けば市場の警戒も強まろう
米トランプ政権では、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)や、コミー前連邦捜査局(FBI)長官ら、幹部の退任が相次いでいます(図表1)。なかには、トランプ米大統領の家族(長女イバンカさんや夫のクシュナー上級顧問)との意見対立が影響しているケースもうかがわれ、政権発足から7カ月で、これほど多くの幹部が政権を離れるのは、やはり極めて異例の事態と言わざるを得ません。
また、8月12日に米バージニア州シャーロッツビルで、白人至上主義団体と反対派の衝突が発生し、トランプ米大統領は「双方に非がある」と発言しました。これに抗議した米企業トップが相次いで製造業評議会と戦略・政策評議会の委員を辞任し、この2つの助言組織は8月16日に解散しました。米トランプ政権の混乱が続いた場合、市場の警戒感も次第に強まる恐れがあり、注意が必要です。
米予算審議は遅れる見通しとなり、米景気対策の時期と規模、経済成長の見通しを下方修正
一方、米議会では、18年度予算と米債務上限の引き上げが、差し迫った問題となっています。18年度の予算決議案は、9月までに審議が終わる公算は小さく、10月の新年度度入り後は、暫定予算でつなぐことになると思われます。また債務上限引き上げ法案の可決には、上院では60票が必要ですが、共和党の上院議席数は52です。ただ最終的には民主党が協力し、米国債の債務不履行(デフォルト)は回避されるとみています。
これらを勘案し、弊社では米景気対策が始まる時期を2017年10-12月期から2018年1-3月期に変更しました。また、景気対策の規模も、当初想定(減税は10年間で2.4兆ドル、インフラ投資は5年間で2,750億ドル)の半分程度にとどまるとの見方に変更しました(図表2)。その結果、米実質GDP成長率の見通しは、2017年を前年比+2.2%から+2.1%へ、2018年を同+2.4%から+2.3%へ、それぞれ小幅に下方修正しました。
ただ最終的に景気対策は実施され債務上限は引き上げへ、株式など弱気相場入りは想定せず
ここ数日、米国市場では、主要株価指数の下落、国債利回りの低下、対主要通貨での米ドルの下落、という反応がみられます。これは、「米トランプ政権の混乱」→「減税など米景気対策の遅れ」→「米経済成長の鈍化」、をとりあえず一気に織り込んだリスクオフ(回避)の動きであり、米トランプ政権の異常事態を目の当たりにすれば、極めて合理的な市場の反応と思われます。
なお、コーン国家経済会議(NEC)委員長や、ムニューシン財務長官は政権にとどまる見通しです。また、共和党は来年の中間選挙をにらみ、多少規模を縮小しても、景気対策を打ち出すと思われます。そして債務上限問題は、議会自らがデフォルトを選択しない限り、上限引き上げでの解決が見込まれます。市場の警戒感はしばらく残る可能性はありますが、株式などが弱気相場入りする展開は、現時点で想定していません。
(2017年8月21日)
市川レポート バックナンバーはこちら
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会