決算発表を経て注目されるセクターの動き

市川レポート(No.421)決算発表を経て注目されるセクターの動き

  • 4月以降は、その他製品、建設業などが好調、背景には業績モメンタムや小型株を選好する動き。
  • 石油・石炭製品、輸送用機器は低調、個別要因や景気敏感業種に対する慎重な姿勢を反映。
  • 決算は堅調な内容を予想、景気敏感業種の見直し買いで株価全体の水準が切り上がる展開か。

 

4月以降は、その他製品、建設業などが好調、背景には業績モメンタムや小型株を選好する動き

今週から2017年4-6月期の決算発表が本格化しています。そこで今回は決算を通じた東証33業種の動きについて注目点などを整理します。東証33業種について4月以降の騰落率をみると(図表1)、「その他製品」、「建設業」、「電気機器」、「その他金融業」、「化学」が上昇率の上位でした。その他製品、、電気機器、化学は前年度も良好なパフォーマンスであったため、投資家が業績モメンタム(勢い)を選好している傾向がうかがえます。

また、建設業、電気機器、化学においては、時価総額の小さい小型株の健闘が目立ち、30%を超えて上昇している銘柄も少なくありません。小型株は一般に、企業情報が少ないなどの理由で、成長性に比べ株価が割安に放置される傾向があり、また為替変動の影響も受けにくいとされています。このような特徴に加え、国内の超低金利環境におけるリスク許容度の高まりが、小型株上昇の一因と考えます。

 

石油・石炭製品、輸送用機器は低調、個別要因や景気敏感業種に対する慎重な姿勢を反映

一方、下落率の大きい業種は「石油・石炭製品」、「海運業」、「鉱業」、「証券・商品先物取引」、「輸送用機器」 となっています。このうち石油・石炭製品、海運業、鉱業は、指数を構成する銘柄数が相対的に少なく、かつ、特定銘柄の時価総額が指数全体のウェイトの多くを占めるという特徴があります(図表2)。そのため、例えば石油・石炭製品指数や鉱業指数は、原油相場のみならず個別銘柄の動きに大きく左右される側面があります。

また、証券・商品先物取引指数も、22銘柄で構成されてはいますが、やはり時価総額ウェイトの大きい銘柄の下げに影響を受けています。なお輸送用機器は、このところ低調な米自動車販売などが弱材料となっている可能性はありますが、繊維製品など素材系業種が軒並み低調であることを勘案すると、投資家の景気敏感業種に対する姿勢にはまだ幾分慎重さが残り、強気になりきれていないと推測されます。

 

決算は堅調な内容を予想、景気敏感業種の見直し買いで株価全体の水準が切り上がる展開か

2017年4-6月期の決算発表では、年間の利益計画に対する進捗率が注目されます。年度の4分の1ということで、単純に考えれば25%が目安になりますが、市場では4-6月期の決算は順調にスタートするとの声も多く聞かれます。弊社も4-6月期決算について、総じて堅調な内容を想定しており、製造業を中心に増益モメンタムが強まる可能性が高いとみています。

この際、投資家の慎重姿勢が徐々に後退すれば、輸送用機器など景気敏感業種への見直し買いの動きが期待されます。好パフォーマンスのその他製品や建設業などは、セクターローテーションから、いったん調整売りに押される展開が予想されますが、決算を経て増益モメンタムが強まれば、下げ幅はいくらか限定されると思われます。そのため今回の4-6月期決算は、株価全体の水準を切り上げる1つのきっかけになりうると考えます。

 

170727図表1170727図表2

 

(2017年7月27日)

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