ドル安・円高の持続性

市川レポート(No.420)ドル安・円高の持続性

  • 足元のドル円相場の動きは、「円高」ではなく「ドル安」、110円近辺への調整でも違和感はない。
  • 米景気は循環的回復が足元で一服、ただ景気後退には至らず、ドル安・円高は108円程度まで。
  • 注目のFOMCだが、今回の重要性はさほど高くなく、引き続き経済指標の強弱を見極める展開か。

 

足元のドル円相場の動きは、「円高」ではなく「ドル安」、110円近辺への調整でも違和感はない

ドル円は7月11日に1ドル=114円49銭水準をつけた後、緩やかにドル安・円高方向へ水準を切り下げ、日本時間の7月24日の朝方に110円台をつけています。背景にあるのは、米国における、弱めの経済指標を受けた利上げ期待の後退と、長期金利上昇の一服です。すなわち、足元のドル円相場の動きは、「円高」ではなく、「ドル安」によるものと考えます。

米長期金利上昇の一服で、ドル安・円高に振れるリスクについては、7月11日付けレポートでお話しした通りです。ドル円は、110円近辺を調整時の目安としていますので、一時的に110円を割り込んでも、違和感はありません。ただし、これから先、景気や物価の見通しを悪化させるような米経済指標が続いた場合、米国を中心とする株価の下落が、リスクオフ(回避)の「円高」につながる恐れがあり、注意が必要です。

 

米景気は循環的回復が足元で一服、ただ景気後退には至らず、ドル安・円高は108円程度まで

弊社は、米国経済について、一般的な認識ほど底堅いものではなく、むしろ、昨年からの循環的な回復が一服する局面にあると考えています(図表1)。そのため、物価の伸び悩みなど、弱めの米経済指標がしばらく続く可能性はありますが、成長ペースは年末から来年にかけて持ち直し、景気後退を懸念するほどではないとみています。この限りにおいては、ドル安・円高が一時的に110円を超えて進んでも、108円程度までと思われます。

このような米国の景気循環の見通しに基づけば、金融政策の正常化を急ぐ理由は見当たりません。また米国では、予算審議を巡る政治的な不透明感が、9月に向けて高まると予想されます。そのため弊社は、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策をしばらく据え置き、バランスシートの縮小は12月に通知、来年1月より開始、そして追加利上げは来年3月まで先送りされるとの見方を維持しています。

 

注目のFOMCだが、今回の重要性はさほど高くなく、引き続き経済指標の強弱を見極める展開か

ドル円相場にとって、目先の材料は、7月25日、26日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)です。今回はイエレン議長の記者会見や、FOMCメンバーによる経済見通しの公表がないため、市場の関心はFOMC声明に集まっています。特に、物価およびバランスシート縮小開始時期に関する記述への注目度が高く、前回の声明では、物価の伸び悩みは一時的で、バランスシート縮小は年内開始という点が明示されました(図表2)。

今回の声明が、物価安定とバランスシートの早期開始に自信を示すタカ派的な表現となれば、為替はいったん、ドル高・円安で反応する可能性が高いと考えます。逆に、より慎重な言い回しのハト派的な表現となれば、足元のドル安・円高の流れに勢いがつくことが予想されます。ただ、現時点で今回の声明が、大幅に変更される公算は小さく、ドル円相場の方向性を決定づけるにはやや力不足とみています。そのためドル円相場は、しばらく経済指標の強弱感を見極める展開が続くと思われます。

 

 

 

170724図表1170724図表2

 

 

(2017年7月24日)

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