FOMC議事要旨の相場的解釈

市川レポート(No.414)FOMC議事要旨の相場的解釈

  • バランスシート縮小開始時期で意見は分かれたが、少なくとも年内の開始通知に異論はない模様。
  • 物価の弱さは一時的、ただその後の下振れ・上振れの懸念が示され、利上げはしばらく様子見か。
  • FRBの慎重姿勢は、ドル高につながりにくいものの、日本株を含め市場に安心感を与える可能性。

 

バランスシート縮小開始時期で意見は分かれたが、少なくとも年内の開始通知に異論はない模様

米連邦準備制度理事会(FRB)は7月5日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(6月13日、14日開催分)を公表しました。市場が期待していたのは、FRBのバランスシート縮小に関する追加情報です。縮小に関する基本方針は、すでに先月のFOMCで示されていましたので、今回は特に開始時期についての議論に注目が集まりました。

しかし議事要旨では、開始時期についてFOMCメンバーの意見が分かれていることが明らかになりました。複数(several)のメンバーは、「数カ月以内」に縮小開始を通知したいと述べた一方、何人か(some)のメンバーは、「今年後半」まで縮小決定を遅らせれば、経済活動と物価の見通しを評価するための時間が得られると述べました。ただ、少なくとも「年内」に縮小開始を通知することには、異論がないように見受けられます。

 

物価の弱さは一時的、ただその後の下振れ・上振れの懸念が示され、利上げはしばらく様子見か

なお、先月のFOMCでは、物価の弱さは「一時的」との見方が示されていましたが、今回の議事要旨でも物価に関わる議論が示されました。それによれば、ほとんど(most)のメンバーは、最近の物価の弱さは、携帯電話サービスや処方薬の価格下落という、「一時的」な要因を反映したものであり、中期的な物価動向にはほとんど影響ないと考えていることが明らかになりました。

ただ、複数(several)のメンバーは、物価の弱さが「続く」かも知れないとの懸念を示した一方、何人か(a couple)のメンバーは、失業率が長期的な自然失業率の水準を大幅に下回れば、物価が2%目標を「超え続ける」との懸念を表明しました。以上より、メンバーの物価判断は、足元の弱さは「一時的」だが、その後は、「下振れ」も「上振れ」も有り得るということになり、利上げ判断はしばらく物価の動きをみた後になると推測されます。

 

FRBの慎重姿勢は、ドル高につながりにくいものの、日本株を含め市場に安心感を与える可能性

今回の議事要旨では、バランスシート縮小開始は年内の通知がメンバーの念頭にあること、追加利上げはしばらく物価動向を見極めた後になること、が確認されました。一部に、緩和的な市場環境が資産価格に与える影響を懸念する向きもみられましたが、総じてFRBの慎重な政策運営姿勢が窺え、相場の観点からは安心できる内容です。おそらく縮小開始が9月でも12月でも、その違いで相場が混乱する状況にはすでにないと思われます。

追加利上げについては、物価に関する経済指標(図表1)を見極める必要がありますが、イエレン議長の議会証言や、米ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウムなども、金融政策を見通す上で重要なイベントです(図表2)。なお、FRBの慎重な姿勢を踏まえれば、ドル円が1ドル=115円を超えて大幅なドル高・円安に振れる展開は、しばらく期待しづらいと思われます。ただ、慎重な姿勢は、日本株を含め市場に安心感を与える可能性があると考えます。

 

 

 

170706図表1170706図表2

 

(2017年7月6日)

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