投資家のリスク選好度合いを確認する

市川レポート(No.410)投資家のリスク選好度合いを確認する

  • 金融危機後に生じた過剰流動性と超低金利環境で、投資家がリスクを取りやすい地合いが続く。
  • 今年前半は新興国株、先進国株が好調、ハイイールドや投資適格社債など利回り選好の動きも。
  • ただし、長期データに基づくシャープ・レシオでみれば、国債や投資適格社債は効率的な投資対象。

 

金融危機後に生じた過剰流動性と超低金利環境で、投資家がリスクを取りやすい地合いが続く

2016年12月28日付レポートと2017年1月4日付レポートにおいて、主要アセットクラスの2008年から2016年までの年間パフォーマンスを振り返りました。主なポイントは、①2008年の金融危機で株式やリートなどのリスク資産は大幅に下落、②日米欧中銀による流動性供給で2009年に株式やリートは急反発、③結果的に積み上がった過剰流動性は超低金利環境を生み、その後は総じて投資家がリスクを取りやすい地合いが継続、などです。

また2017年1月4日付レポートでは、2017年のアセットクラスを展望しました。その際、2017年は債券よりも株式が選好されやすく、またトランプ政策への期待後退や欧州政局リスクで市場が動揺しても、過剰流動性がアセットクラスの下落を緩和する可能性があるとお話ししました。そこで、6月も最終週を迎えましたので、2017年前半の主要アセットクラスの動きを検証してみます。

 

今年前半は新興国株、先進国株が好調、ハイイールドや投資適格社債など利回り選好の動きも

2016年12月30日から2017年6月23日までの間、パフォーマンスが良好だった順にアセットクラスを並べると、新興国株式(+14.5%)、先進国株式(+9.2%)、世界ハイイールド債券(+4.7%)、世界投資適格社債(+3.7%)、世界リート(+3.3%)、世界国債(+1.3%)となっています。これに対し、コモディティは-12.9%と、主要アセットクラスのなかでマイナスのパフォーマンスになっています(図表1)。

新興国株が好調な理由として、多くの新興国で景気が底堅く推移していることや、緩やかな米利上げで資金流出などの混乱が生じていないことが挙げられます。なお米利上げについては、市場で追加利上げの織り込みがあまり進んでおらず、世界的に低金利環境は当面続くとの見方が根強いように思われます。これが投資家の利回り選好、すなわちハイイールド債券や投資適格社債の選好につながっていると推測されます。

 

ただし、長期データに基づくシャープ・レシオでみれば、国債や投資適格社債は効率的な投資対象

なお2008年から2016年までの間、主要アセットクラスの年平均収益率について高い順に並べると、世界ハイイールド債券(+10.4%)、世界リート(+8.5%)、先進国株式(+6.3%)、世界投資適格社債(+5.4%)、新興国株式(+5.3%)、世界国債(+4.0%)、コモディティ(-4.9%)となります。このように長期でみると、過剰流動性が生み出した超低金利環境の下、利回りを選好する投資家の動きが明確に読み取れます。

ただ、株式やリート、ハイイールド債券は、一般に収益率のバラつき(標準偏差、すなわちリスク)が大きいという傾向があります。そこでシャープ・レシオという尺度を使って、各アセットクラスを比較してみます。シャープ・レシオは、その数値が大きいほど、リスク1単位から得られる超過収益率が大きいことを示します。したがって図表2の通り、世界国債や世界投資適格社債は、効率的な投資対象ということができます。

 

170626図表1170626図表2

 

 

 

 

(2017年6月26日)

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