ロシアゲートをどう解釈するか
市川レポート(No.392)ロシアゲートをどう解釈するか
- ロシアゲートについては、特別検察官の捜査によって、今後決定的な証拠が出てくるか否かに注目。
- ただ大統領弾劾の可能性は低いことなどから、証拠の有無に関わらず市場は最終的に落ち着こう。
- 世界の金融市場は依然として過剰流動性に溢れており、ロシアゲートで危機に陥るリスクは小さい。
ロシアゲートについては、特別検察官の捜査によって、今後決定的な証拠が出てくるか否かに注目
米トランプ政権とロシアとの不透明な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」の混迷化を受け、5月17日の米国市場では、株価の下落や国債価格の上昇(利回りは低下)など、リスクオフ(回避)の動きが強まりました。翌18日の東京市場でも、日経平均株価が一時19,500円を割り込んで下落するなど、警戒ムードが続き、米税制改革の遅延やトランプ米大統領弾劾の可能性を指摘する向きもみられます。
トランプ米大統領がロシアに機密情報を漏らしたとされる問題については、大統領に情報の機密指定を解除する権限があるため、今回の行為が違法性を問われる可能性は低いと思われます。一方、ロシアの米大統領選への干渉疑惑やトランプ米大統領の司法妨害疑惑については、5月17日に特別検察官に任命されたロバート・ミュラー元米連邦捜査局(FBI)長官の捜査などを通じて、決定的な証拠が出てくるか否かが焦点となります(図表1)。
ただ大統領弾劾の可能性は低いことなどから、証拠の有無に関わらず市場は最終的に落ち着こう
今後の捜査で、ロシアが米大統領選に干渉したという新たな物的証拠がみつかり、またトランプ大統領に明確な司法妨害の意図があったことが証明されれば、大統領弾劾の動きが強まる可能性があります。ただし大統領の弾劾には、下院で過半数、上院で3分の2の賛成が必要です(図表2)。そのため多数議席を占める共和党が、トランプ米大統領を見放さない限り、今の議会で弾劾が成立する可能性は低いと思われます。
また仮に弾劾成立となった場合、大統領にはペンス副大統領が就任することになります。市場ではペンス副大統領の方が、議会との関係が良好で、政策がスムーズに遂行されるのではないかとの見方もあります。そのため、証拠の有無に関わらず、市場は最終的には落ち着いて行くことが予想され、また政府と議会が予算審議を重視する限り、税制改革の遅れも限定的と思われます。
世界の金融市場は依然として過剰流動性に溢れており、ロシアゲートで危機に陥るリスクは小さい
少し広い視野で考えれば、世界の金融市場には依然として過剰流動性が溢れており、リスク資産にとってはこれが悪材料の影響を和らげる緩衝材になっています。そのためロシアゲートで、世界の金融市場が危機的な混乱状況に陥るリスクはかなり小さいとみてよいと思います。この観点からは円高圧力も一時的と考えられ、ドル安・円高方向の動きは、1ドル=110円を短期の目安とし、割り込んでも一時的とみています。
同様に日経平均株価の下げも限定的と考えます。北朝鮮を巡る地政学リスクが高まった4月、日経平均株価は取引時間中に18,224円68銭の安値をつけました。軍事衝突に晒されるリスクと、ロシアゲートのリスクを比較した場合、日経平均株価に短期的に与える影響は前者の方が大きいと思われ、株安方向の動きは19,000円を短期の目安と考えます。前述の通り、証拠の有無に関わらず、市場は最終的には落ち着くという見方が定着すれば、早い段階でこの材料は消化される可能性があると思われます。
(2017年5月18日)
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