米軍によるシリア軍事介入の解釈

市川レポート(No.376)米軍によるシリア軍事介入の解釈

  • シリアへの米軍事介入の報道が伝わった東京市場では、リスクオフの反応がみられたものの一時的。
  • 戦局が大幅拡大しない限り、主要国の経済活動への影響は限定的で金融市場の動揺も軽微に。
  • 地政学リスク発生時に確認すべきは3点で、いずれも問題なければ、市場への過度な懸念は不要。

シリアへの米軍事介入の報道が伝わった東京市場では、リスクオフの反応がみられたものの一時的

米国防総省は、米国軍が日本時間の4月7日午前9時40分頃、シリアのシャイラート空軍基地に対し巡航ミサイルを発射したとの声明を発表しました。アサド政権の化学兵器を使用したとみられる反政府勢力への攻撃に対し、トランプ米大統領は4月5日、レッドライン(越えてはならない一線)をいくつも越えたと述べ、軍事介入の有無が焦点となっていました。

シリアへの米軍事介入の報道が伝わった4月7日午前の東京市場では、直ちに株安、円高、長期金利低下の反応がみられ(図表1)、また原油や金の先物価格が上昇するなど(図表2)、典型的なリスクオフ(回避)の動きが確認されました。ただその後は徐々に落ち着きを取り戻し、ドル円は一時110円13銭近くまでドル安・円高が進んだものの、日中は110円台を維持し、日経平均株価も結局、前日比上昇して取引を終えました。

戦局が大幅拡大しない限り、主要国の経済活動への影響は限定的で金融市場の動揺も軽微に

トランプ米大統領がこのタイミングで軍事介入に踏み切った背景には、①内政の失策を挽回するため、軍事面での強い姿勢を内外に示すこと、②アサド政権を支援するロシアとの関係を疑う向きの懸念を払拭すること、などがあったと思われます。また米中首脳会談と重なったことを勘案すると、中国や北朝鮮に対する一定の牽制効果も考えていた可能性があります。

米国には、今回の軍事介入を機に地上部隊を投入し、軍事行動を拡大する意図はないと思われます。また現在は、世界的に景気が緩やかな拡大局面にあり、かつ流動性も潤沢な状況にあります。そのためシリアへの軍事介入については、戦局が劇的に拡大しない限り、米国をはじめ主要国の経済活動への影響は限定的となり、金融市場の動揺も軽微にとどまると考えます。

地政学リスク発生時に確認すべきは3点で、いずれも問題なければ、市場への過度な懸念は不要

ただ地政学リスクは、これまで以上に市場で意識されやすくなると思われます。今後注目すべきは、まず軍事介入を行った米国とアサド政権を支援するロシアとの関係です。4月11日、12日にティラーソン米国務長官がロシアを訪問し、ラブロフ外相やプーチン大統領と会談する見通しです。アサド政権を巡りどのような見解が示されるのかは確認しておく必要があります。

また米国は中国に対し、北朝鮮への影響力行使を望んでいることから、この点に関し、米中首脳会談でどのような方向性が示されるかについても注意が必要です。この先、地政学リスクが発生した場合、確認すべき点は、①金融システムへの影響、②流動性の潤沢さ、③他国・地域への拡大の可能性、の3点です。いすれも問題がないと判断できれば、金融市場への影響は限定されるため、過度な懸念は不要と考えます。

 

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(2017年4月7日)

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