FRBの資産縮小時期について

市川レポート(No.375)FRBの資産縮小時期について

  • FOMC議事要旨では、再投資政策の変更について、参加者の大半は今年の終盤が適切と判断。
  • 再投資政策の変更については、再投資の終了方法や、終了を決定する基準などについても議論。
  • 米追加利上げは6月と12月に行われ、再投資終了は12月に通知、翌年の3月から始まると予想。

FOMC議事要旨では、再投資政策の変更について、参加者の大半は今年の終盤が適切と判断

米連邦準備制度理事会(FRB)が4月5日に公表した3月14日、15日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、保有資産の縮小について本格的な議論が行われていたことが明らかになりました。FRBは現在、保有する長期国債などについて満期償還分を再投資し、資産規模を約4兆5,000億ドルに維持しています(図表1)。市場ではこの保有資産の縮小がいつ始まるかについて関心が高まっていました。

議事要旨では、「参加者の大半は、経済成長が予想通り続けばフェデラルファンド(FF)金利の段階的な引き上げが継続すると予想し、再投資政策の変更は今年終盤に適切になる可能性が高いと判断した」ことが示されました。FRBはこの表記によって、年内に再投資政策を変更する可能性について、市場への織り込みを始めたと考えられますが、年内の政策変更は市場が想定していた時期よりもやや早いように思われます。

再投資政策の変更については、再投資の終了方法や、終了を決定する基準などについても議論

その他にも政策変更に関する様々な議論が見られ(図表2)、参加者は総じて長期国債と住宅ローン担保証券(MBS)の両方について再投資を終了することが望ましいと考えていることが分かりました。また再投資の終了を段階的に行うか、一度に行うかについても検討が行われ、前者は金融市場のボラティリティ(変動)を引き起こすリスクが低い一方、後者は市場への意思伝達が行いやすいなどの指摘がありました。

また多くの参加者は、資産規模の縮小は受動的かつ予測可能な方法で実施されるべきと述べました。そして幾人かの参加者は、再投資終了の決定は、何らかの数値目標あるいはFF金利の水準に基づいて行われるべきとした一方、他の数人の参加者は、景気や金融情勢に関する定性的な判断に基づいて行われるべきと主張しました。さらに、ほぼ全ての参加者が、政策変更は実際の開始よりもかなり前の時点で市場に伝達すべきという点で合意しました。

米追加利上げは6月と12月に行われ、再投資終了は12月に通知、翌年の3月から始まると予想

議事要旨から、FRBは米国の経済成長が予想通り続く限り、6月や9月など早い段階で2回の追加利上げを行い、その後は12月までに再投資の終了を開始したいという意図が読み取れます。ただし、この一連のペースは、年内の米景気見通しからすると、幾分速いように思われます。そのため弊社では、追加利上げは6月と12月に行われ、再投資終了は12月に通知され、翌年3月から始まると予想します。

4月5日は議事要旨発表後に米国株が下落し、ドル安・円高が進んだことで、6日の日本株は大きく下落しました。しかしながらその後、リスクオフ(回避)の動きは比較的限定され、6日の米国株の上昇を受けて、7日朝方の日本株にも落ち着きがみられました。この先、仮に市場が米金融政策を巡る思惑で大きく混乱するようであれば、FRBは利上げペースや再投資終了時期の調整を含め、慎重に対処すると思われます。

 

170407図表1170407図表2

 

 

(2017年4月7日)

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