日銀はこの先どう動くか

市川レポート(No.354)日銀はこの先どう動くか

  • 日本国債利回りは年初から上昇傾向、これは一部に浮上していた日銀テーパリング観測が影響。
  • 黒田総裁はテーパリング観測を否定、日銀は指値オペなどで10年国債利回りの上昇圧力に対応。
  • 日銀はオーバーシュート型コミットメントの下、多少の利回り上昇でも長短金利操作目標は維持へ。

日本国債利回りは年初から上昇傾向、これは一部に浮上していた日銀テーパリング観測が影響

年初から足元まで、米国の10年国債利回りはおおむね横ばい推移が続いているのに対し、日本の10年国債利回りはやや上昇傾向がみられます。日米で対照的な動きがみられる背景として、米国ではトランプ政策への過度な期待が一服したこと、そして日本では日銀の国債買い入れを巡り、一部にテーパリング(買い入れ額の段階的縮小)観測が浮上したことがあると思われます。

テーパリング観測が強まったのは1月25日でした。この日は予想されていた「1年超3年以下」と「3年超5年以下」の国債買い入れが見送られ、その結果、両期間の1月の買い入れ回数は12月の6回から5回に減少しました(図表1)。一方、「10年超25年以下」と「25年超」の国債買い入れは実施されましたが、買い入れ額は前回から据え置かれ、この日の利回り上昇は幅広い年限に及びました。

黒田総裁はテーパリング観測を否定、日銀は指値オペなどで10年国債利回りの上昇圧力に対応

1月25日のオペレーションについては、日銀が単に「1年超3年以下」と「3年超5年以下」の需要は強いと判断し、国債買い入れの見送りで利回り押し上げを図ったものと思われます。実際に黒田総裁も1月31日の記者会見で、「日々の運営によって先行きの政策スタンスを示すわけではない」と述べ、市場の一部でみられたテーパリング観測を否定しました。

ただ現状ゼロ%程度に水準目標を設定している10年国債利回りについて、上昇圧力抑制に日銀の苦労が窺えます。日銀は「5年超10年以下」の国債買い入れについて、1月27日に買い入れ額を前回から400億円増の4,500億円とし、それ以降4,500億円の買い入れを続けています。また2月3日には指値オペで10年国債を買い入れました。さらに「10年超25年以下」と「25年超」についても、2月10日に100億円ずつ増額しています。

日銀はオーバーシュート型コミットメントの下、多少の利回り上昇でも長短金利操作目標は維持へ

前述の黒田総裁のコメントを踏まえると、国債買い入れ額や回数に多少の変化があったとしても、それは基本的にオペレーション上の調整であり、政策変更を示唆するものではないと考えた方が良いと思われます。ただ10年国債利回りについては水準目標が設定されている以上、当面は0.1%程度を上限の目安として、引き続き必要であれば超長期ゾーンの利回り上昇の抑制にも動くとみられます。

なおこの先、米国で利上げ見通しが強まった場合や、米議会の予算審議案で財政規模が明らかになった場合、米国債の利回り上昇を通じて、日本国債の利回りにもいくらか上昇圧力が生じる可能性があります。ただ日銀がオーバーシュート型コミットメント(2%の物価目標達成が安定的に持続するまで現行政策を継続)を掲げている限り、そのような状況でも長短金利操作の目標水準は維持される可能性が高いと思われます。

 

170215図表1

 

 (2017年2月15日)

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