日米首脳会談後のドル円相場と日本株
市川レポート(No.352)日米首脳会談後のドル円相場と日本株
- 日米首脳会談は双方ともに意義のある結果となり、安倍・トランプ下の日米関係は順調にスタート。
- ただ米通商・為替政策の方針はこれから明らかになるため一方的な円安・ドル高の公算は小さい。
- 日本株も過度に楽観的な動きにはならず、しばらく米財政規模を巡る思惑で振れやすい展開か。
日米首脳会談は双方ともに意義のある結果となり、安倍・トランプ下の日米関係は順調にスタート
2月10日に行われた日米首脳会談は、友好ムードのなか波乱なく終了しました。会談前はトランプ米大統領が安全保障や通商問題にどのような姿勢で臨むのか読みにくかった点が懸念されましたが、日本にとって、①日米同盟の重要性が再確認できたこと、②米国側からの貿易不均衡や為替政策に関する直接的な言及を回避できたことは、大きな意義があったと思われます。
また米国にとっても、①アジア太平洋地域で重要な軍事拠点となる日本との友好関係を内外に示したこと、②日本から積極的な経済協力の意思が示され、高い技術力で米国の成長戦略に貢献し、新しい雇用を生み出せるという強いメッセージが得られたことは、十分な成果だったと思われます。やや警戒感が残るなかで始まった今回の首脳会談でしたが、安倍・トランプ下の日米関係は、まずは順調なスタートを切ったといえます。
ただ米通商・為替政策の方針はこれから明らかになるため一方的な円安・ドル高の公算は小さい
米国から自由貿易協定(FTA)の締結要請はありませんでしたが、日米首脳会談の共同声明には、日米で2国間の枠組みに関する議論を行う旨が記されました(図表1)。今後、米インフラ事業への投資や貿易の枠組みなどについて、麻生副総理とペンス副大統領との経済対話で協議される見通しですが、自動車貿易などは、場合によって厳しい交渉となる可能性も残ります。
また為替については、日本の財務大臣と米国の財務長官との間で緊密な協議を続けていく方針が示されました。米国では財務長官や商務長官など主要閣僚の承認が進んでおらず(図表2)、米国の通商政策や為替政策の方針が明らかになるのはこれからです。そのため今回の首脳会談を経ても、ある程度の警戒感は市場に残り、一方的に円安・ドル高が進む公算は小さいと思われます。
日本株も過度に楽観的な動きにはならず、しばらく米財政規模を巡る思惑で振れやすい展開か
日本株についても同様に、米国の通商政策や為替政策を見極める必要性から、過度に楽観的な動きにはつながらない可能性があります。またトランプ米大統領の財政プランを含む経済運営の枠組みは、米上下両院合同本会議での演説(2月28日)や、その後の予算教書で明らかになる見通しです。またその先には米議会での予算審議も控えているため、日本株はしばらく米財政政策の規模を巡る思惑で上下に振れやすい展開が予想されます。
目先の材料として、2月14日にイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長による半期に一度の議会証言が予定されており、次の利上げ時期に関する手掛かりが示されるか否かに注目が集まります。ただ財政政策の規模が明らかになるまでは米国経済への影響も見通しにくく、現段階でイエレン議長が利上げ時期を示唆する可能性は低いと思われます。そのため今回の議会証言がドル円相場と日本株の方向性に与える影響は限定的とみています。
(2017年2月13日)
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