日本株の材料整理

市川レポート(No.350)日本株の材料整理

  • 足元の企業決算は総じて良好、EPSも持ち直し傾向にあり、業績見通しは着実に改善している。
  • ただ業種毎のパフォーマンス格差や個別銘柄物色の動きから、指数全体の上昇には至っていない。
  • 日経平均は日米関係と米財政政策に失望なら18,000円割れで、好感なら年末20,000円か。

足元の企業決算は総じて良好、EPSも持ち直し傾向にあり、業績見通しは着実に改善している

日本では3月期決算企業の2016年10-12月期決算発表が続いています。報道によれば、2月8日までに決算を発表した企業のうち2割強が2017年3月期の純利益は過去最高になると見込んでいます。今回の決算では、米大統領選挙以降の円安進行や、商品相場の持ち直し、そして新興国経済の循環的回復が、業績見通しの主な上方修正要因になっていると思われます。

東証株価指数(TOPIX)の12カ月先予想1株あたり利益(EPS)をみると、昨年来の緩やかな持ち直しの動きが続いていることが確認できます(図表1)。その結果、TOPIX構成企業のなかで業績予想を上方修正する企業の割合が増え、TOPIXのリビジョン・インデックスはプラス圏で推移しています。これらの動きは日本企業の業績見通しの着実な改善を示唆しています。

ただ業種毎のパフォーマンス格差や個別銘柄物色の動きから、指数全体の上昇には至っていない

2016年12月30日から2017年2月8日までのTOPIXの騰落率は+0.4%にとどまります。しかしながらTOPIXを構成する33業種の動きをみると、業種によってかなり騰落率に差があることが分かります(図表2)。騰落率の上位には、いわゆる素材関連の業種が多く、商品相場の持ち直しや、新興国を中心とする世界的な景気の回復が影響しているように思われます。

一方、騰落率の下位には、輸送用機器やゴム製品など自動車関連の業種が入っており、トランプ米大統領の通商政策を巡る思惑が反映されている可能性があります。企業の業績見通しは着実に改善しているものの、業種毎のパフォーマンス格差や、決算発表後に個別銘柄を物色する動きによって、今のところ株式指数全体の上昇には至っていないと考えられます。

日経平均は日米関係と米財政政策に失望なら18,000円割れで、好感なら年末20,000円か

目先、日本株にとって重要な材料は、安倍・トランプ政権下での日米関係、そして米国の通商・財政政策です。これらについての概要は、日米首脳会談(2月10日)、トランプ米大統領の米上下両院合同本会議での演説(2月28日)、その後の米予算教書、米議会の予算審議等を通じて明らかになる見通しで、日本株の方向性にも大きな影響を与える可能性があります。

例えば自動車貿易を巡る日米関係の悪化や為替問題への発展、また米財政規模への失望や財政執行の遅延などは円高・株安要因であり、日経平均株価は18,000円台の維持が困難になる恐れもあります。一方、日米が新しい経済協議に向け足並みをそろえ、また米国が年内にも現実的な規模での財政出動を実施できれば、これらは円安・株高要因となり、日経平均株価は年末時点で20,000円程度の着地が見込まれます。

 

170209図表1170209図表2

 

 

 (2017年2月9日)

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