トランプ大統領就任演説~日本株とドル円相場への影響

市川レポート(No.344)トランプ大統領就任演説~日本株とドル円相場への影響

  • トランプ大統領の就任演説は通商政策などに関して保護主義的な色が強く出たが想定の範囲内。
  • 政策の過度な期待修正で日本株は上値の重さを意識、ただ業績見通しが下支えとなるか注目。
  • 春先は財政規模に失望でいったん株安・円高、その後は着実な政策執行なら株高・円安を予想。

トランプ大統領の就任演説は通商政策などに関して保護主義的な色が強く出たが想定の範囲内

1月20日、ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に就任しました。注目の就任演説では、米国第一主義の政策方針が明確に示され、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の言葉で締めくくられました。また式典直後、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱などが公約通り宣言されました(図表1)。

一方、中国を為替操作国に認定するよう財務長官に指示する方針については、事前に報道されていた通り、就任初日の宣言は見送りとなりました。また財政政策については詳細な言及がなかったため、2月の予算教書を待つことになります。以上より就任演説は通商政策などに関して保護主義的な色が強く出る結果となりましたが、想定の範囲内で、同日のニューヨーク市場でも株、長期金利、為替はいずれも比較的落ち着いた動きとなりました(図表2)。

政策の過度な期待修正で日本株は上値の重さを意識、ただ業績見通しが下支えとなるか注目

市場の焦点は今後、トランプ大統領が掲げる政策の「実効性」に移り、これまでのような政策への「期待」が相場を主導する展開は終息すると思われます。弊社では通商政策が過度な保護主義に傾くことはなく、また財政政策の規模は財政中立的な水準に落ち着くとみています。ただ最終的にそこに至るまでは市場の思惑が交錯し、日本株やドル円のボラティリティ(変動性)もしばらく高止まる公算が大きいと考えます。

日本株は目先、政策への過度な「期待」の修正が進むなかで、上値の重さが意識される展開が予想されます。ただ日本では今週から上場企業の2016年10-12月期決算発表が本格化しますので、米大統領選挙以降の円安進行や、商品相場の持ち直し、また新興国経済の循環的回復が業績見通しの上方修正につながれば、日本株の下支えになると思われます。そして日本企業の決算発表が一巡した後は、再び米国の財政政策に焦点が移ります。

春先は財政規模に失望でいったん株安・円高、その後は着実な政策執行なら株高・円安を予想

ドル円相場も「期待」修正が進むなか、ドル安・円高の動きが優勢になるとみています。トランプ大統領は2月の予算教書で、公約通りの財政プランを示すと思われますが、3月頃に明らかになる議会の予算決議案は、公約を大幅に下回る財政規模になる見込みです。そのためこの時点で市場の失望感が強まることが予想されますが、財政中立的な規模でも米成長ペースの加速は可能と考えますので、深刻な市場の混乱には至らないと考えます。

弊社では年内のドル安・円高の目安を1ドル=112円とみていますが、春先にかけ政策への失望が大きくなれば、一時的にこの水準を割り込むリスクは残ります。ただ現実的な政策が着実に執行される見通しとなれば、年末時点で117円程度の水準は回復可能と思われます。日経平均株価も春先までは18,000円割れへの警戒が必要と考えますが、ドル円相場が年内112円よりドル高・円安水準で安定推移すれば、業績改善の織り込みが一段と進み、年末時点で20,000円程度の着地を予想します。

 

170123図表1170123図表2

 

 

 (2017年1月23日)

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