トランプ会見の要旨と今後の注目点

市川レポート(No.340)トランプ会見の要旨と今後の注目点

  • 市場で注目された記者会見だったが、財政・通商・為替の各政策に関する詳細な言及はなかった。
  • 米国市場は一時、株安・長期金利低下・ドル安で反応したものの、市場に大きな混乱はみられず。
  • 期待主導の相場展開は終了し、市場の関心は政策の具体的な中身に移りつつあると思われる。

市場で注目された記者会見だったが、財政・通商・為替の各政策に関する詳細な言及はなかった

トランプ次期米大統領は1月11日、選挙後初めての記者会見を開きました。市場では、財政・通商・為替の各政策に関する発言に注目が集まっていましたが、結局いずれも詳細な言及はありませんでした。例えば財政政策について、米国で最も多くの雇用を創出する大統領になると述べたものの、具体的に財政をどう活用していくかの方策は示されませんでした。

通商政策については、依然として保護主義的な姿勢が窺え、米国外に移転する企業には大規模な国境税を課す方針が改めて示されました。また為替政策について、ドル高についての直接的なコメントはみられず、政策方針に関する新たな手掛かりは得られませんでした。その他、メキシコ国境における壁建設や医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止など、従来通りの主張もみられました。

米国市場は一時、株安・長期金利低下・ドル安で反応したものの、市場に大きな混乱はみられず

1月11日の米国市場では、記者会見が始まると、警戒感から株価の下落、長期金利の低下、ドルの下落が顕著になりました(図表1)。トランプ次期米大統領が記者会見で医薬品の入札方式を始めると発言したことで、ヘルスケア株が急落し、株式市場の重しとなりました。しかしながら下げはほぼ、ヘルスケアセクターに限定され、結局ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数はそろって前日比上昇して取引を終えています。

米長期金利の低下とドル安は財政政策に関する具体的な言及がなかったことが材料視されたと思われますが、それも一時的な動きにとどまり、米10年国債利回りは前日比ほぼ変わらずの2.37%で取引を終えました。またドル円もニューヨーク外国為替市場で一時114円25銭付近までドル安・円高が進みましたが、結局115円台を回復して引けました。以上より、記者会見は少なくとも市場全体に大きな混乱を招くものとはなりませんでした。

期待主導の相場展開は終了し、市場の関心は政策の具体的な中身に移りつつあると思われる

1月12日の東京市場では朝方、日経平均株価が19,100円を割り込み、10年国債利回りも前日から低下しています。またドル円も再び115円を割り込み、114円台で推移する展開となっています。トランプ次期米大統領の記者会見が波乱なく終了したこと自体はとりあえず安心材料ですが、財政政策などに関して具体的な内容が示されなかったのは、市場の期待に応えられなった部分だと思われます。

現時点では、すでにトランプ政策への期待が相場を主導する局面は終了し、市場の関心は財政政策などの具体的な中身に移りつつあるように見受けられます。今後のトランプ政権の主要スケジュールは図表2の通りですが、まずは1月20日の大統領就任式が注目されます。今回の記者会見と異なり、具体的な政策方針が示されるとみられ、そこで市場による最初の評価が行われると思われます。

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 (2017年1月12日)

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