2017年のドル円相場展望

市川レポート(No.339)2017年のドル円相場展望

  • 年間の予想中心レンジは112円~124円、トランプ政策が失望とならなければ円急騰は回避へ。
  • 米国の緩やかな利上げと日本の金融緩和維持という見通しは、ごく緩やかなドル高・円安を示唆。
  • 想定される米為替政策などからは大幅なドル高・円安が見込めず、年後半はレンジ内での上下か。

年間の予想中心レンジは112円~124円、トランプ政策が失望とならなければ円急騰は回避へ

2017年のドル円レートについて、弊社では1ドル=112円から124円を中心とするレンジを予想しています(図表1)。2016年11月の米大統領選挙以降、トランプ政策に対する期待先行でドル高・円安が進行してきましたが、政策の規模や実行時期はまだ確定しておらず、2017年のドル円相場は比較的高めの変動性(ボラティリティ)を想定する必要があると考えます。

トランプ政策への期待が続く間、ドル円は120円前後の水準を意識する動きが予想されますが、足元では期待がやや一服しており、目先レンジの下限を一時的に下回る場面も想定されます。それでも何らかのきっかけで、トランプ政策への失望が広がらない限りは期待の一服程度にとどまり、円急騰は避けられるとみています。ただ期待が相場を牽引する展開は、政策の概要が明らかになるとみられる3月頃までには終了すると思われます。

米国の緩やかな利上げと日本の金融緩和維持という見通しは、ごく緩やかなドル高・円安を示唆

春先以降は日米金融政策にも注目が必要です。2016年12月に発表された、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)では、2017年に3回の利上げが示唆されました。弊社はトランプ次期米大統領の減税やインフラ投資によって2017年後半に米国の成長ペースが加速するとみていますが、ドル高の物価抑制効果が緩やかなペースでの利上げを可能とし、2017年は2回の利上げを予想しています。

一方、日銀の金融政策については、日本国内において物価の上昇傾向が明確に確認されるまで、少なくとも2017年いっぱいは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みが維持されると思われます。米国の緩やかな利上げと日本の金融緩和維持という、日米金融政策見通しから推測されるドル円相場の方向性は、ごく緩やかなドル高・円安ということになります。

想定される米為替政策などからは大幅なドル高・円安が見込めず、年後半はレンジ内での上下か

弊社ではトランプ次期米大統領の通商政策について、交渉ベースの現実的なアプローチが採用され、保護主義に対する市場の懸念は次第に後退するとみています。また財政政策については、トランプ次期大統領の公約を下回る財政中立的な規模になると見込んでいます。そのため2017年の米10年国債利回りは2.0%~2.8%でのレンジ推移にとどまり、日米金利差拡大による大幅なドル高・円安には至らないと予想します。

なお2017年は、欧州の政局や中国および新興国の動向次第で、一時的に円が上昇する場面も予想されますが、リスク要因としてみておくべきはトランプ次期大統領の為替政策です。現時点で為替政策の方向性は明確に示されていないものの、米国内の製造業を重視する従来の姿勢を勘案すれば、過度なドル高は容認されない可能性があります。この点からも一方的なドル高・円安は見込み難く、2017年のドル円は年後半にかけてレンジ内で上下する時間帯が増えると予想します。

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 (2017年1月10日)

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