アセットクラスの年間ランキング(2008年~2012年編)

市川レポート(No.335)アセットクラスの年間ランキング(2008年~2012年編)

  • 2008年の金融危機発生時は、国債や投資適格債が選好され、株式やリートは大幅に下落した。
  • 日米欧中銀の流動性供給で2009年に株式やリートは急反発、その後の欧州債務危機も克服。
  • 2010年から積み上がった過剰流動性は低金利環境を生み、アセットクラスの下落幅を緩和した。

2008年の金融危機発生時は、国債や投資適格債が選好され、株式やリートは大幅に下落した

今回のレポートでは、主要アセットクラスについて過去数年分のパフォーマンスを検証し、年間ランキングにまとめます。併せて各年の重要イベントを振り返り、市場環境の変化がアセットクラスに及ぼす影響を整理します。2017年の金融市場は、トランプ次期大統領の政策次第で大きく変動する可能性があり、各アセットクラスを展望するにあたって、事前にパフォーマンス特性を把握しておくことは有効と思われます。

2008年から2012年までの年間パフォーマンスのランキングは図表1の通りです。2008年はリーマンショックを機に金融危機が発生し、市場は一気にリスクオフ(回避)に傾きました。アセットクラスでは、国債や投資適格債が相対的に選好され、株式やリートなどのリスク資産は大幅に下落しました。こうしたなか主要国の中央銀行は積極的に金融緩和を行い、市場の安定と景気の下支えに努めました。

日米欧中銀の流動性供給で2009年に株式やリートは急反発、その後の欧州債務危機も克服

100年に一度と言われた金融危機でしたが、日米欧の中央銀行が資産買い入れなどの非伝統的金融政策を通じて巨額の流動性を市場に供給した結果、主要株価指数は2009年3月頃には底を打って上昇に転じました。2009年の年間パフォーマンスをみると、2008年とは対照的に株式やリートが急騰し、国債や投資適格債は伸び悩みました。このように金融危機のアセットクラスへの影響は、わずか1年程度だったことが分かります。

ただその後も危機は続きます。2009年10月にギリシャで財政データの粉飾が発覚したことを機に、欧州債務危機が発生しました。財政赤字を抱えるギリシャやスペインなどの国債が下落し、それらを保有する金融機関への信用不安が一気に強まりました。日米欧の中央銀行は流動性供給の拡大を余儀なくされ、2度にわたるギリシャ向け金融支援(2010年5月、2012年3月)や欧州安定メカニズム(ESM)の設立(2012年10月)を経て、危機は終息しました。

2010年から積み上がった過剰流動性は低金利環境を生み、アセットクラスの下落幅を緩和した

日米欧の中央銀行による非伝統的金融政策は、金融危機と欧州債務危機の解決に大きく貢献しました。ただその結果、金融システム内に巨額の過剰流動性が積み上がり、世界的な低金利環境を生み出しました。投資マネーは次第に利回りを追求する動きが顕著になり、2010年から2012年の年間パフォーマンスをみると、リートやハイイールドが選好されていることが分かります。

2010年から2012年は、金融市場が欧州債務危機に揺れた時期でした。それにもかかわらず、各年のアセットクラスが総崩れとならなかった点は、2008年とは大きく異なる点です。この違いは過剰流動性の有無に起因し、2008年当時は過剰流動性が存在していませんでした。その後積み上がった過剰流動性は、低金利環境を生み出すと同時に、欧州債務危機に対するアセットクラスの下落幅を緩和してきたと考えられます。

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 (2016年12月28日)

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