日本企業の業績見通し

市川レポート(No.331)日本企業の業績見通し

  • 円安進行で予想EPSが緩やかに持ち直すなど、業績見通しには着実にあく抜け感が強まっている。
  • 弊社調査対象企業の経常利益見通しは今年度が前年度比+1.8%、来年度は同+13.2%。
  • 業績見通しが改善するなか今後は循環物色の広がりが株価の上昇余地拡大のカギを握ることに。

円安進行で予想EPSが緩やかに持ち直すなど、業績見通しには着実にあく抜け感が強まっている

東証株価指数(TOPIX)構成企業の12カ月先予想1株当たり利益(EPS)は、ドル円相場に強い影響を受ける傾向があります。図表1は、ドル円レートの変動で予想EPSがどの程度変動するかを示したものです。ここ5年程度の期間でみると、ドル円が1円円安(円高)方向に動くと、予想EPSも約1円増加(減少)する関係にあり、円安は素直に企業業績の追い風と考えてよいと思います。

実際、足元の円安を受けて、TOPIXの12カ月先予想EPSは緩やかながらも持ち直しの動きがみられます(図表2)。その結果、TOPIX構成企業のなかで業績予想を上方修正する企業の割合が増え、TOPIXのリビジョン・インデックスは明確にプラス圏へ浮上しています。このように円安進行によって、日本企業の業績見通しには着実にあく抜け感が強まっています。

弊社調査対象企業の経常利益見通しは今年度が前年度比+1.8%、来年度は同+13.2%

このような状況のなか弊社は今般、調査対象とするコアリサーチ・ユニバース221社(金融を除く)の業績見通しを更新しました。2016年度の経常利益は、前回9月時点では前年度比-1.6%としていましたが、今回は同+1.8%へと上方修正し、減益見通しから増益見通しに転換しました。また2017年度の経常利益は、前年度比+11.3%から同+13.2%へと、こちらも上方修正しました。

製造業・非製造業の区分でみると、製造業137社の経常利益は、2016年度が前年度比-2.6%(前回-6.5%)、2017年度は同+16.2%(前回+12.4%)で、非製造業84社の経常利益は、2016年度が前年度比+9.2%(前回+6.5%)、2017年度は同+8.8%(前回+9.8%)という見通しです。なお為替レートの前提は、ドル円が1ドル=110円(前回100円)、ユーロ円が1ユーロ=115円(前回と変わらず)です。

業績見通しが改善するなか今後は循環物色の広がりが株価の上昇余地拡大のカギを握ることに

株価の割安・割高を判断する尺度に株価収益率(PER)があり、一般に数字が小さい(大きい)と割安(割高)とされますが、最近TOPIXのPERは上昇傾向にあります。Datastreamによれば、TOPIXの12カ月先予想PERは直近で14.4倍となり、過去5年平均の13.4倍を上回ってきました。しかしながら、ここまでのPERの上昇は前述の通り、利益見通しの改善に裏付けられていると考えられます。

トランプ・ラリーが続くなか、日本でも金融、エネルギー、輸出関連株など、いわゆる景気敏感業種の株価は顕著な上昇がみられました。ただ本日12月13日は、水産・農林業、医薬品、情報・通信業など、トランプ・ラリーでは相対的にパフォーマンスが低迷していた業種が買われました。業績見通しは改善しつつあるため、今後はこのような循環物色の広がりが、株価の上昇余地拡大のカギを握ると思われます。

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 (2016年12月13日)

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