2016年米大統領選挙~想定シナリオ直前チェック

市川レポート(No.319)2016年米大統領選挙~想定シナリオ直前チェック

  • 直近の選挙人獲得予想数はクリントン候補216人、トランプ候補164人でクリントン候補優勢。
  • 市場はクリントン候補圧勝ならリスクオン、僅差で勝利なら不透明感を嫌気してややリスクオフへ。
  • トランプ候補逆転勝利ならリスクオフ加速、ただ金融危機や景気後退を引き起こす類のものでない。

直近の選挙人獲得予想数はクリントン候補216人、トランプ候補164人でクリントン候補優勢

米連邦捜査局(FBI)は11月6日、私用メール問題に関するクリントン候補の不起訴維持を明らかにしました。トランプ候補の支持率が急上昇するなか、このニュースはクリントン候補にとって強い追い風です。それでも11月8日の米大統領選挙の行方は最後まで予断を許さない状況にあります。そこで今回のレポートでは、選挙結果のシナリオをいくつか想定し、それぞれにおいて金融市場がどのように反応するか、考えてみたいと思います。

選挙人は全米50州と首都ワシントンで538人います。投票結果は州ごとに集計し、候補者は勝利した州の選挙人を総取りしますので、過半数(270人)の獲得で当選となります。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、直近の選挙人獲得予想数はクリントン候補が216人、トランプ候補は164人で、依然クリントン候補優勢です。トランプ候補はフロリダ州など激戦州で選挙人を獲得しないと当選できません(図表1)。

市場はクリントン候補圧勝ならリスクオン、僅差で勝利なら不透明感を嫌気してややリスクオフへ

シナリオ1「クリントン候補圧勝」:クリントン候補が激戦州を制して圧勝すれば、さすがのトランプ候補も敗北を認めざるを得ません。金融市場はリスクオン(選好)で反応し株価は上昇、また12月の米利上げが確実視され、米長期金利と米ドルも緩やかに上昇すると思われます。その後は財務長官などの組閣人事や「最初の100日」における政策が金融市場の材料になると考えます。

シナリオ2「クリントン候補僅差で勝利」:トランプ候補は敗北を宣言せず、票の再集計や選挙のやり直しを求め、訴訟を起こすことも考えられます。法廷闘争となれば最終結果の確定までに時間を要し、金融市場はこれを嫌気して、ややリスクオフ(回避)の動きを強めることが予想されます。総じて株価の上値は重くなり、また年内の米利上げが見通しにくくなることで、米長期金利や米ドルも幾分軟調に推移すると思われます。

トランプ候補逆転勝利ならリスクオフ加速、ただ金融危機や景気後退を引き起こす類のものでない

シナリオ3「トランプ候補が勝利」:トランプ候補が激戦州を抑えて逆転勝利する可能性もあります。この場合、金融市場ではリスクオフの動きが加速し、一段の株安、長期金利低下、米ドル安が予想されます。しかしながらトランプ大統領の誕生は、世界の金融システムに深刻な打撃を与える類のものではなく、したがって直ちに世界的な金融危機や景気後退を引き起こす類のものでもありません。この点は冷静に考える必要があります。

なお連邦議会選挙にも注意が必要です。下院は共和党に有利な区割りとされていますので、上院の多数党と大統領の組み合わせも政治リスクの大小に影響します(図表2)。なお今回は3つのシナリオを想定しましたが、この他、両候補とも過半数の選挙人を獲得できなかった場合(その際は下院が大統領を、上院が副大統領を投票で選出)なども、考えられないことはありません。選挙結果は早ければ日本時間の11月9日昼ごろに当確が報道される見通しですので、金融市場の反応に注目したいと思います。

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 (2016年11月7日)

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