クリントン候補メール問題の余波

市川レポート(No.317)クリントン候補メール問題の余波

  • トランプ候補の支持率上昇でリスクオフの動きが強まり、ドル円は短期的にドル安・円高トレンドへ。
  • 日経平均株価も短期的に下落トレンドへ、ただし17,500円付近までの反発でトレンドは再転換。
  • メール問題の進展は十分注意する必要あり、ただ世論調査の結果に過度な楽観や悲観は禁物。

トランプ候補の支持率上昇でリスクオフの動きが強まり、ドル円は短期的にドル安・円高トレンドへ

米連邦捜査局(FBI)は10月28日、民主党のクリントン候補の私用メール問題について調査の再開を明らかにしました。米紙ワシントン・ポストとABCテレビが11月1日に発表した世論調査(10月27日から30日に実施)によれば、共和党のトランプ候補の支持率は46%と、クリントン候補の45%を上回りました。米大統領選挙の不透明感が強まったことで、同日の欧米株式市場は軒並み下落し、ドルは対主要通貨で減価しました。

トレンド系チャートの「パラボリック・システム」でドル円の動きをみると、10月31日時点でSAR(ストップ・アンド・リバース)は1ドル=104円12銭水準に位置していました。翌11月1日の海外市場で103円80銭水準をつけてSARを割り込んだため、ドル円は短期的にドル安・円高トレンドへ転換しました(図表1)。ただ11月1日時点でSARは105円53銭水準にあるので、目先ここを上抜ければ、ドル円は再びドル高・円安トレンドに戻ります。

日経平均株価も短期的に下落トレンドへ、ただし17,500円付近までの反発でトレンドは再転換

日経平均株価の動きも、パラボリック・システムでみると、11月1日時点でSARは17,221円水準に位置していました。翌11月2日は17,080円59銭の安値をつけてSARを割り込んだため、日経平均株価も短期的に下落トレンドへ転換しました(図表2)。ただ11月2日時点でSARは17,473円水準にあるので、目先ここを上抜ければ、日経平均株価は再び上昇トレンドに回帰します。

ドル円、日経平均とも、上昇トレンドに戻るためのSAR水準は、現状水準からそれほど遠くないところに位置しています。そのためパラボリック・システムが示唆する下落トレンドは、短期的に終了する可能があると考えられます。なお今回のレポートではパラボリック・システムが客観的に示す短期的なシグナルを解説していますが、テクニカル分析で相場の動きを判断するには、複数の手法を使って総合的に行うことが一般的です。

メール問題の進展は十分注意する必要あり、ただ世論調査の結果に過度な楽観や悲観は禁物

FBIはクリントン候補の私用メール問題について、関連する可能性のあるメールが新たに見つかったものの、それらがどの程度重要性を持つかは不明としています。クリントン陣営はFBIに詳細を公表するよう求めており、不正の事実がないことに自信を持っている様子が窺えます。11月8日の大統領選挙までに、何らかの違法性が明らかになる可能性は低いと考えられますが、今後の展開は注意深く見守る必要があります。

市場が嫌気するのは、大統領選挙に不透明感が強まることです。違法性の有無もさることながら、世論が変化すれば大統領選挙前でも相場は直ちにリスクオフ(回避)へ傾くことも予想されます。ただし、一般に世論調査はサンプル数が小さく、前述の米紙ワシントン・ポストとABCテレビの場合も1,128人に過ぎません。そのため調査結果は必ずしも母集団の真の支持率とはならず、世論調査の結果に過度な楽観や悲観は禁物と考えます。

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 (2016年11月2日)

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