ドル円105円台乗せ後の日本株展望

市川レポート(No.315)ドル円105円台乗せ後の日本株展望

  • ドル円は105円台前半の短期上値目途達成、大幅な調整がなければドル高・円安トレンド継続。
  • 想定レートの円高方向への変更で、今後の業績見通し下方修正への懸念が後退する可能性も。
  • ドル円と日本株に上昇余地はあるが、米大統領選挙を前に動意の乏しい相場展開も予想される。

ドル円は105円台前半の短期上値目途達成、大幅な調整がなければドル高・円安トレンド継続

ドル円は10月27日のニューヨーク外国為替市場で、1ドル=105円35銭水準までドル高・円安が進行しました。ドイツ銀行の7-9月期決算が予想外の黒字となったことや、英国の7-9月期実質GDP速報値が市場予想を上回ったことで欧州国債利回りが上昇し、これに連れた米国債利回りの上昇がドル買いにつながったと推測されます。また欧州懸念の後退は、リスクオン(選好)の円売りも促しやすいという側面があります。

フィボナッチ・リトレースメントというテクニカル分析を使って計算すると、2015年6月高値(125円86銭水準)から2016年6月安値(99円02銭水準)までの下げ幅から23.6%戻したところが、ちょうど105円35銭水準となります。ドル円は短期的な上値の目途に達したことになるため、目先は一服感が出やすくなります。104円台への反落もみておく必要はありますが、大幅な調整でなければ、ドル高・円安トレンドは維持されると思われます。

想定レートの円高方向への変更で、今後の業績見通し下方修正への懸念が後退する可能性も

日本では今週から上場企業の2016年4-9月期決算発表が本格化していますが、依然として円高が業績に大きく影響しています。輸出企業の多くは、円高による採算の悪化や為替差損の発生で利益が圧迫されており、通期営業利益計画を下方修正した企業もみられます。なお今回、下期の想定為替レートが比較的大幅に円高方向へ変更されており、ドル円は1ドル=100円水準の設定も目立ちます(図表1)。

企業が想定為替レートを円高方向へ変更するなか、ドル円の実勢レートは緩やかに円安方向へ進んでいます。そのためこの流れが継続すれば、通期営業利益計画が更に下方修正されるという懸念は次第に後退し、あく抜け感が強まる可能性があります。海外投資家は10月に入り早々に買い越しに転じていますが(図表2)、株価上昇の素地が整うにつれて、本格的な日本株の見直し買いも期待されます。

ドル円と日本株に上昇余地はあるが、米大統領選挙を前に動意の乏しい相場展開も予想される

来週は10月31日、11月1日に日銀金融政策決定会合、11月1日、2日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますが、いずれも政策変更は予想されていません。また11月4日の10月米雇用統計について、市場では非農業部門雇用者数が前月比17万3,000人程度増加するとみられています(Bloomberg予想)。ただ実際の雇用者数が予想比大きく上振れ、あるいは下振れとならなければ、ドル円相場や日経平均株価への影響は限定的と考えます。

ドル円は104円を大きく割り込まなければドル高・円安トレンドは維持される見通しで、次の上値目途として200日移動平均線(10月27日時点で107円33銭水準)が意識されやすい状況です。また日経平均株価も4月25日高値17,613円56銭に近づきつつあります。ただ11月8日の米大統領選挙を前に、積極的な取引が手控えられる可能性があり、ドル円も日本株もやや動意の乏しい相場展開が続くことも予想されます。

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 (2016年10月28日)

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