ドル円相場のテクニカル分析

市川レポート(No.312)ドル円相場のテクニカル分析

  • 移動平均線における日足、21日線、90日線の動きは、短期的なドル高・円安トレンドを示唆。
  • 一目均衡表もドル高・円安トレンドを示唆、ただパラボリック・システムのトレンド転換水準に注意。
  • 短期チャートポイントは105円台前半、ただ103円前後の調整でドル安・円高へのトレンド転換も。

移動平均線における日足、21日線、90日線の動きは、短期的なドル高・円安トレンドを示唆

ドル円は10月5日から足元まで、約2円幅(1ドル=102円67銭水準から104円64銭水準)でのレンジ推移が続いています。これは11月8日に米大統領選挙という一大イベントを控え、多くの市場参加者が様子見姿勢を強めたため、相場の動意が乏しくなったものと推測されます。そこで今回は、テクニカル分析を使って、短期的なドル円相場の方向性について考えます。

テクニカル分析で使用するチャートは、①トレンド系と②オシレーター系に分けられ、前者は相場のトレンド判断に、後者は相場の過熱感の判断に適しています。はじめに①に分類される「移動平均線」を確認します。ドル円は年初から90日移動平均線に上値を抑えられていましたが、足元では同線を上抜け、短期的なドル高・円安トレンドが示唆されています。21日移動平均線の同線の上抜けも、そのトレンドを確認する動きです(図表1)。

一目均衡表もドル高・円安トレンドを示唆、ただパラボリック・システムのトレンド転換水準に注意

次に、同じく①のトレンド系に分類される「一目均衡表」をみてみます。図表2の通り、(1)日足が雲(先行スパン1と2の間の領域)の上に位置、(2)転換線が基準線の上に位置、(3)遅行線が26日前の日足の上に位置、となっています。一目均衡表では、この3条件が揃うことを三役好転といい、短期的なドル高・円安トレンドが示唆されたと解釈することができます。

もう1つトレンド系チャートの「パラボリック・システム」を確認します。このチャートでは日足がSAR(ストップ・アンド・リバース)に接した時点でトレンド転換と判断されます。現在、ドル高・円安トレンドが示唆されていますが、10月25日にSARは103円24銭水準に位置しているため、日足がこのレベルをつけると、ドル安・円高へのトレンド転換と解釈されます。

短期チャートポイントは105円台前半、ただ103円前後の調整でドル安・円高へのトレンド転換も

最後にオシレーター系のチャートもみておきます。「RSI」でドル円の動きを検証すると、10月以降ドルが買われ過ぎとされる70%水準を一度も超えていません。ただRSIよりも動きが速いとされる「ウィリアムズのR」をみると、ドル円は足元でドルが買われ過ぎとされる-20%水準を割り込んでいます。しかしながら総じてみれば、現時点でドル高・円安の過熱を強く示唆するオシレーター系チャートは多くありません。

以上より、ドル円はドル高・円安トレンドにあり、相場の過熱感もみられないため、短期的には一段のドル高・円安の動きも予想されます。フィボナッチ・リトレースメントで算出される目途値は、2015年6月高値(125円86銭水準)から2016年6月安値(99円02銭水準)までの下げ幅から23.6%戻した105円35銭水準です。ただ日足が103円前後まで調整した場合、一目均衡表では雲を割り込むことになり、パラボリック・システムではドル安・円高へのトレンド転換が示唆されるため、注意が必要です。

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 (2016年10月25日)

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