日本企業の4-9月期決算~注目ポイントを整理する

市川レポート(No.311)日本企業の4-9月期決算~注目ポイントを整理する

  • 円高が輸出企業など製造業の業績に与える影響に注目、円高で減益でも株価は上昇の可能性。
  • 資源価格上昇と爆買い一服が、関連業種の業績にどの程度影響を及ぼすのか見極めが必要に。
  • 決算でのあく抜け、米大統領選挙後の為替安定、海外勢の業績見直しで、日本株は一段高へ。

円高が輸出企業など製造業の業績に与える影響に注目、円高で減益でも株価は上昇の可能性

上場企業の2016年4-9月期決算発表が今週から本格化します。先週20日、安川電機(※)が輸出企業の先陣を切って4-9月期決算を発表しました。主要輸出企業の業績を予想する上で市場の注目が集まりましたが、円高進行などの影響で連結決算は減収減益となりました。しかしながら利益は期初の会社計画ほど悪化せず、またアナリストの予想を上回ったとの評価から、翌21日の同社の株価は大きく上昇しました。

4-9月期決算における注目ポイントの1つは、引き続き円高が輸出企業を中心とする製造業の業績に与える影響と考えます(図表1)。しかし、たとえ円高の進行で利益が減少したとしても、①減益は企業の想定範囲内か、②売り上げは堅調に伸びているか、③17年3月期の業績見通しに変更はあるか、④想定為替レートに変更はあるか、これらを十分に見極めることによって、安川電機のように株価上昇につながる可能性があります。

※ 個別銘柄に言及していますが、当該銘柄の推奨を目的とするものではありません。

資源価格上昇と爆買い一服が、関連業種の業績にどの程度影響を及ぼすのか見極めが必要に

このところ原油や鉄鉱石などの資源価格は総じて底堅い動きをみせています(図表2)。一般に資源価格の上昇は、鉱業、石油・石炭製品、鉄鋼、卸売業(商社)などの業績に追い風と考えられます。ただこれら業種の企業については、資源安の影響で4-6月期決算が不振に終わったところも多く、資源価格の今後の動きにもまだ不透明感が残ることを勘案すると、業績見通しに慎重さは残ると思われます。

なお足元では、訪日中国人観光客の「爆買い」が一服しつつあるとの報道がみられますが、その要因としては中国政府による個人輸入扱いの荷物に対する関税引き上げや円高の進行が挙げられます。高額品消費の一服は、引き続き百貨店など小売業の業績にマイナスの影響を及ぼす恐れがありますが、訪日外国人客数自体は前年比で2ケタの伸びが続いており、これ自体はホテル、交通、外食などには好材料となる可能性も考えられます。

決算でのあく抜け、米大統領選挙後の為替安定、海外勢の業績見直しで、日本株は一段高へ

今後発表される4-9月期決算において、円高や資源価格などの企業業績に対する影響が市場の予想範囲内であれば、あく抜け感から株価上昇の素地が整う可能性があります。しかしながら11月8日に米大統領選挙を控えているため、投資家は少なくとも選挙結果を確認するまで慎重姿勢を維持することも考えられます。そうなった場合、日本株はしばらく個別物色の動きにとどまることが予想されます。

弊社が調査対象とする主要企業(コアリサーチユニバース)221社の経常利益見通しは、1ドル=100円、1ユーロ=115円を前提に、2016年度は前年度比-1.6%、2017年度は同+11.3%です。4-9月期決算の悪材料が想定の範囲内となり、米大統領選挙を経て円相場が安定すれば、海外投資家が日本企業の業績を見直し、日本株に回帰することも期待されます。現時点で日経平均株価は2016年12月末が17,800円程度、2017年3月末は18,000円程度を見込みます。

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 (2016年10月24日)

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