年末までの日本株展望

市川レポート(No.303)年末までの日本株展望

  • 低調な日本株はFOMC後のドル安や日銀新政策を見極めたいとする投資家の慎重姿勢が影響。
  • 米大統領選挙前の株価調整に注意、波乱なく選挙終了なら投資家心理は年末に向け改善へ。
  • 円高修正と利益見通し好転で海外勢は日本株再評価へ、日経平均は年末17,800円を予想。

低調な日本株はFOMC後のドル安や日銀新政策を見極めたいとする投資家の慎重姿勢が影響

日本株は、日米金融政策決定会合や第1回米大統領候補テレビ討論会を経ても、依然としてさえない動きが続いています。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、年内利上げの可能性を残しつつ、来年以降の緩やかな利上げペースを示唆しました。これを受けて米長期金利は低位で安定推移し、ドルは主要通貨に対し緩やかな減価傾向がみられます。主要国の株価は総じて底堅く推移していますが、日本株は為替のドル安・円高が重しになっています。

日銀の新たな枠組みに対する日本株の反応は幾分冷静です。今回はマイナス金利の深掘りが見送られましたが、追加緩和の手段としてマイナス金利の深掘りや長期金利の操作目標引き下げが明示されており、利鞘縮小や運用益縮小など金融機関への懸念は残ります。また利回り曲線(イールドカーブ)の管理(コントロール)は日銀にとって初めての試みであり、株式投資家もそのコントロールの巧拙や株価への影響を慎重に見極めざるを得ません。

米大統領選挙前の株価調整に注意、波乱なく選挙終了なら投資家心理は年末に向け改善へ

年末までを展望した場合、重要イベントとして11月8日の米大統領選挙が挙げられます。9月26日の第1回テレビ討論会ではクリントン候補優勢との報道もみられましたが、最後まで予断を許さない状況です。ここまでの両候補の主張や経済政策を踏まえれば、トランプ候補優勢なら市場はリスクオフ(回避)に傾きやすく、クリントン候補優勢なら市場は落ち着いた動きになりやすいと思われます。

米大統領選挙までは不透明感の強い相場展開が見込まれ、日本株も短期的な調整リスクが意識されます。ただ選挙が波乱なく終了し、12月のFOMCで利上げが実施される流れとなれば、年末に向けて投資家心理が改善し、ドル安・円高の動きは徐々に修正されると思われます。なお欧州の政治動向や中国の景気動向は、引き続き重要な材料ですが、欧州では欧州連合(EU)離脱論に一時期ほどの勢いはなく、中国でも政府に景気支援の政策姿勢がみられるため、現時点で過度な懸念は不要と考えます。

円高修正と利益見通し好転で海外勢は日本株再評価へ、日経平均は年末17,800円を予想

1ドル=100円程度の為替レート水準は、足元の株価に織り込み済みと思われます。そのため年末に向けて円高リスクが後退すれば、日本企業の利益見通しは(図表1)、上方修正の動きが顕著にみられるようになると考えます。なお弊社が調査対象とする主要企業(コアリサーチユニバース)221社の経常利益見通しは、1ドル=100円、1ユーロ=115円を前提に、2016年度は前年度比-1.6%、2017年度は同+11.3%となっています(図表2)。

米国が利上げを行うなかで世界経済と金融情勢の見通しが好転し、日本企業の業績懸念が緩和されれば、海外投資家による割安な日本株の再評価が期待できます。国内経済に目を向けると、財政出動による金利や通貨の上昇(クラウディングアウト)は金融緩和で抑制される方向にあり、両者の組み合わせ(ポリシーミックス)は景気下支え効果があると考えます。以上を踏まえ、日経平均株価の年末水準は17,800円程度を見込みます。

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 (2016年9月28日)

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