日本株を巡る投資マネーの動き

市川レポート(No.296)日本株を巡る投資マネーの動き

  • 依然上値の重い日本株だが、東証33業種の動きをみると7月上旬辺りから潮目の変化が窺える。
  • 年初から7月上旬までは内需・ディフェンシブが優勢、以降足元まで外需・シクリカルが優勢の展開。
  • 海外投資家が戻るには、もう一段の世界経済と金融情勢の見通し改善や円高リスク後退が必要。

依然上値の重い日本株だが、東証33業種の動きをみると7月上旬辺りから潮目の変化が窺える

先週の日経平均株価は9月5日の取引時間中に一時17,156円36銭をつけたものの、その後は売りに押される展開となり、9日は16,965円76銭と、節目の17,000円を割り込んで取引を終えました。週明け12日の東京株式市場では、9日に米国株が大幅下落した流れを受けて売り優勢で取引が始まり、日経平均株価の終値は結局、前週末比292円84銭安の16,672円92銭となりました。

依然として日本株は上値の重さが目立ちますが、改めて年初から足元までの業種別動向や投資部門別株式売買状況を確認してみます。まず東証33業種の動きに注目すると、7月上旬辺りから潮目の変化が窺えます。この時期は、7月8日の6月米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが大幅に増加し、また7月10日の参議院選挙で与党圧勝による経済対策への期待が高まったことなどから、日本株の上昇と円安が進行しました。

年初から7月上旬までは内需・ディフェンシブが優勢、以降足元まで外需・シクリカルが優勢の展開

2015年12月30日から2016年7月8日までを期間1、2016年7月8日から9月9日までを期間2とすると、東証33業種のうち期間1では、総じて内需・ディフェンシブが外需・シクリカルをアウトパフォームしました。しかしながら期間2においては、総じて外需・シクリカルが内需・ディフェンシブをアウトパフォームするという、リバーサルの動きが顕著にみられました(図表1)。

年初は原油安などで世界的に金融市場が混乱したため、期間1で内需・ディフェンシブが選好されたことは理にかなっています。一方、期間2では米国の利上げ期待が徐々に高まったことがポイントです。米国が利上げに踏み切る時は、世界経済と金融情勢の見通しが一段と改善しているはずです。そのため利上げ観測の浮上とともに、割安に放置されていた外需・シクリカルが物色されたことも、また理にかなっています。

海外投資家が戻るには、もう一段の世界経済と金融情勢の見通し改善や円高リスク後退が必要

次に投資部門別株式売買状況をみると(図表2)、信託銀行と事業法人の買い越しが目立っていますが、前者は年金の株式運用、後者は自社株買いと思われます。個人も買い越しですが、さほど勢いはみられません。これに対し海外投資家は大幅な売り越しが続いており、これが日本株の重しとなっています。そのため日本株が本格的な上昇に転じるには、少なくとも海外投資家の買いが戻ってくる必要があります。

例えば、米国が利上げを行うなかで世界経済と金融情勢の見通しが一段と改善し、極端な円高リスクが後退した場合は、世界景気に敏感でかつ割安な日本株に、海外投資家の目が改めて向かう可能性があります。なお9月20日、21日は日米ともに金融政策の決定会合が行われます。今回は日銀による金融政策の総括的な検証も公表される見通しであり、年末に向けた日本株の動きを読む上で、極めて重要なイベントとなります。

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 (2016年9月12日)

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