日銀政策決定と市場の評価

市川レポート(No.281)日銀政策決定と市場の評価

  • 日銀はETF買い増しと米ドル資金の安定供給措置を決定、マイナス金利深掘りなどは見送り。
  • これを受けドル円はドル安・円高が進行、日本株は金融株が上昇、国債価格は下落の動きに。
  • 日銀は次回会合で政策効果の総括的な検証を行う予定、政策枠組に関する変更有無に注目。

日銀はETF買い増しと米ドル資金の安定供給措置を決定、マイナス金利深掘りなどは見送り

日銀は7月28日、29日の金融政策決定会合で金融緩和の強化を決定しました(図表1)。具体的には、①ETF買い入れの増額(年間約3.3兆円から約6兆円へ)、②成長支援資金供給・米ドル特則(米ドル資金供給制度)の総枠拡大(120億ドルから240億ドルへ)、③米ドル資金供給オペに伴う担保国債の貸付制度を新設、の3点です。マネタリーベースの増額、長期国債およびJ-REITの買い増し、マイナス金利の深掘りは見送られました。

同時に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)では、物価目標の達成時期が「2017年度中」で据え置かれました。ただし今回、それは「中心的な見通しとして」であり、「先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい」とされ、従来よりもトーンは弱まったように思われます。なお消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年度比伸び率は、2016年度のみ下方修正となりました(図表2)。

これを受けドル円はドル安・円高が進行、日本株は金融株が上昇、国債価格は下落の動きに

政策決定の発表前、為替市場でドル円は1ドル=104円水準を挟んで上下する神経質な動きが続いていました。発表後は想定されたよりも小粒な内容だったとの見方が強まり、ドル円は一時102円71銭水準までドル安・円高が進行しました。日経平均株価も円相場を睨み乱高下する展開となり、16,100円水準まで下落しましたが、結局前日比92円43銭高の16,569円27銭で取引を終えました。

今回はマイナス金利の深掘りが見送られ、外貨資金の円滑な調達に配慮した政策が決定されたことから、金融機関には追い風になるとの思惑で金融株は大幅に上昇しました。一方、国債市場では、マイナス金利の深掘りに加え、量の拡大も見送られたことで、国債価格は大きく下落(利回りは上昇)しました。10年国債利回りは、-0.27%近くで推移していましたが、政策発表後は-0.16%近くまでマイナス幅を縮めました。

日銀は次回会合で政策効果の総括的な検証を行う予定、政策枠組に関する変更有無に注目

政府の経済対策は8月2日に閣議決定される見通しとなり、政府・日銀は金融緩和と財政出動で足並みを揃えた格好になりました。これにより、ある程度は景気を下支える効果も期待できると思われます。なお日銀は次回の会合で、これまでの政策効果について総括的な検証を行う予定です。その際、現行の金融政策の枠組みについて何らかの変更がなされるか否かに注目したいと思います。

ドル円については、緩やかな米利上げのペースが予想されるなか、米金利の大幅上昇を背景とするドルの上昇は見込み難い状況です。また日本の金融・財政政策による円安の動きも限定的と思われ、当面のレンジは98円~108円を予想します。日本株は、足元で本格化している企業決算に注目ですが、今のところ極端に悲観的な内容も少ないように思われます。目先は16,000円付近での値固めと反転の材料を積み上げられるかが焦点です。

160729図表1160729図表2

 

 (2016年7月29日)

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