期待先行での株高・円安~落ち着きどころを探る

2016/07/13

市川レポート(No.275)期待先行での株高・円安~落ち着きどころを探る

  • ドル円は7月12日に105円近くまで上昇し、日経平均株価は7月13日に16,400円台を回復。
  • これは日本での大型経済対策への期待と強力な追加緩和への思惑が重なったことが大きな要因。
  • ドル円、日本株もそろそろ一服感が出やすい水準、市場の関心はイベント集中の海外に向かおう。

ドル円は7月12日に105円近くまで上昇し、日経平均株価は7月13日に16,400円台を回復

足元で日本株の上昇と円安が進んでいます。その理由としては、①7月8日の6月米雇用統計で、非農業部門雇用者数の伸びが大幅に増加し、雇用の減速懸念がひとまず遠のいたこと、②7月10日の参議院選挙で与党が圧勝し、大型の経済対策への期待が高まったこと、③7月11日に英国でメイ内相がキャメロン首相の後任になることが決まり、欧州連合(EU)離脱に関する不安が1つ解消したこと、が挙げられます。

①と③は世界の金融市場に好材料となり、ここ数日、リスク資産全般に上昇傾向がみられます(図表1)。日本の場合は②の影響も大きく、週明け7月11日の東京市場では、日本株が朝方から上昇し、ドル円はしばらく小動きでしたが、午後に入り円安が加速しました。その後ドル円は7月12日に105円近くまで上昇し、日経平均株価は7月13日に一時16,400円台を回復しています。

これは日本での大型経済対策への期待と強力な追加緩和への思惑が重なったことが大きな要因

安倍首相は7月11日の参議院選挙後の記者会見で、経済対策を早期に策定し、アベノミクスを加速させる意向を示しました。経済対策の事業規模は10兆円を超える大型のものとなり、新規国債の追加発行も検討される見通しです。また来日中のベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、黒田日銀総裁と7月11日に、安倍首相と7月12日に、それぞれ会談を行いました。

「ヘリコプター・ベン」の異名を取るバーナンキ前議長だけに、会談では「ヘリコプター・マネー(ヘリコプターから現金をばらまくように、政府が国民に現金を供給する政策)」の議論があったのではないかという市場の憶測を呼んでいます。このように、政府による大型経済対策への期待と、日銀による強力な追加緩和への思惑が重なり、短期間での日本株上昇と円安進行につながったと思われます。

ドル円、日本株もそろそろ一服感が出やすい水準、市場の関心はイベント集中の海外に向かおう

日銀の金融政策決定会合は7月28日、29日に開催され、政府の経済対策の規模や内容が判明するのは8月中とみられます。その間、政策期待だけで株高・円安を支え続けることは難しいと思われ、ドル円の105円付近や、日経平均株価の16,000円台半ばから後半辺りは、取り敢えず一服感が出やすい水準と思われます。またここから先、日銀の会合までは海外のイベントが集中するため(図表2)、市場の関心はこれらに向きやすくなると考えます。

各イベントのポイントは以下の通りです。中国経済は緩やかな減速が指標で確認できるか否か、欧州の金融政策は英国民投票後の先行き不安を払拭できる政策判断が示されるか否かです。また米大統領選挙の正式候補として、民主党はクリントン氏、共和党はトランプ氏をそれぞれ指名する見通しですが、両党の政策綱領も注目されます。いずれも波乱なく通過すれば、緩やかなリスクオン(選好)相場が期待できますが、波乱となればリスクオフ(回避)相場への戻りが予想されるため、引き続き警戒は必要です。

160713図表1160713図表2

 

 (2016年7月13日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

 

 

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ