ドル円相場の見通しを更新
市川レポート(No.272)ドル円相場の見通しを更新
- ドル円の予想レンジは年内いっぱい95円から105円、引き続き円高方向のリスクに警戒が必要。
- 日銀・政府の政策は円高リスクを軽減も、年1回の米利上げでは大幅なドル高・円安は期待薄。
- 米大統領選の行方と米利上げ見通しは、ドル円相場を上下両方向に大きく動かす材料となろう。
ドル円の予想レンジは年内いっぱい95円から105円、引き続き円高方向のリスクに警戒が必要
英国民投票での欧州連合(EU)離脱という予想外の結果を受け、ドル円相場はドル安・円高方向に水準を切り下げました(図表1)。6月24日の日本時間早朝、ドル円は1ドル=106円84銭水準をつけていましたが、開票が進むにつれて警戒感が強まり、正午前には一気に1ドル=99円02銭水準まで下落しました。ただドル円はその後いったん103円台の回復をみていますので、24日の下げ幅の半値(102円93銭水準)は戻したことになります。
今回の英国民投票の結果を受け、弊社はドル円相場の見通しを更新しました。下限を1ドル=95円、上限を1ドル=105円とし、ドル円は年内いっぱいこのレンジを中心とした推移が続くと考えます。また年末時点の着地については、1ドル=100円水準を予想します。7月5日の東京市場において、ドル円は概ね1ドル=102円台で推移していますので、この水準よりも円高方向のリスクに引き続き警戒が必要ということになります。
日銀・政府の政策は円高リスクを軽減も、年1回の米利上げでは大幅なドル高・円安は期待薄
日米の政策対応に目を向けると、日銀は早ければ7月28日、29日の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切る見通しです。マイナス金利の深掘りとETFの買い入れ増額が中心とみていますが、量を加えた3次元緩和の可能性もあります。また政府の経済対策は真水で7.5兆円程度になる公算が大きくなりました。これらの政策については、大幅な円安は期待できないまでも、円高リスクの軽減には一定の効果があると考えます。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを12月13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで先送りするとみられ、利上げは2016年が1回、2017年は2回と予想しています。またフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む12月の利上げ確率は約12%にとどまっており(図表2)、米長期金利の上昇を背景とする大幅なドル高・円安の動きはしばらく見込み難い状況です。
米大統領選の行方と米利上げ見通しは、ドル円相場を上下両方向に大きく動かす材料となろう
英国では新首相が選出される9月の保守党大会が注目されますが、離脱の意思を欧州理事会に通告するのは来年にずれ込む見通しです。この他、年内の政治イベントとして重要なのは、やはり11月の米大統領選です。仮に、大型減税を主張するトランプ氏の当選が市場に織り込まれていった場合、財政悪化懸念からドルに減価圧力が強まり、ドル円はドル安・円高方向へ大きく振れる恐れがあります。
逆にドル円が1ドル=105円を超えてドル高・円安が進むためには、少なくとも米国景気の底堅さが確認され、市場に早期利上げと利上げペースの加速という織り込みが必要と思われます。ただ米景気拡大局面はすでに7年を経過しており、ここからの成長加速や速いペースでの利上げは徐々に難しくなっています。なお英国とEUによる順調な離脱交渉や、米大統領選挙の波乱なき終了も、ドル高・円安材料と考えます。
(2016年7月5日)
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