為替、株式など主要市場の動きを俯瞰する

市川レポート(No.270)為替、株式など主要市場の動きを俯瞰する

  • 為替市場ではポンドが最も下落し円とドルが上昇、強い通貨同士のドル円は足元でやや膠着。
  • 株式市場では円高進行で日本株が大幅安、英景気下振れ波及懸念でドイツ株などは更に安い。
  • 金融市場はリスクオフだが信用収縮や金融不安に至っておらず、比較的落ち着いた対処が可能。

為替市場ではポンドが最も下落し円とドルが上昇、強い通貨同士のドル円は足元でやや膠着

英国の国民投票が行われた6月23日から27日までにおける主要市場の動きを確認します。為替市場で主要32通貨の相対的な変化をみると、最も買われた通貨が日本円、次いで米ドルとなり、最も売られた通貨は英ポンドとなりました(図表1)。大まかに区分すると、日本円、米ドルに次いで相対的に買われたグループにはアジア通貨が多く含まれ、英ポンドに次いで相対的に売られたグループには欧州通貨が多く含まれました。

アジア通貨は地理的、経済的観点から、英国の欧州連合(EU)離脱の影響を受けにくいとして選好されたと推測されます。欧州通貨は逆に影響を受けやすいとして敬遠されたと思われます。日本円や米ドルは一般に、市場でリスクオフ(回避)の傾向が強まった場合に買われやすい「避難通貨」とされていますが、今回もその通りの動きになりました。なお日本円、米ドルとも買われているため、ドル円は足元で方向感なくやや膠着しています。

株式市場では円高進行で日本株が大幅安、英景気下振れ波及懸念でドイツ株などは更に安い

株式市場において主要94指数の騰落率をみると、上海総合指数などごく一部の指数は小幅高となったものの、それ以外は下落という結果になりました。大まかに区分すると、下落率の小さいグループにはアジア株が多く含まれ、下落率の大きいグループには欧州株が多く含まれました。やはり通貨と同様、英国のEU離脱の影響度合いに対する見方の違いが、国や地域毎の株価変化率の差につながっていると推測されます。

下落率は米ダウ工業平均株価が-4.83%、英FTSE100指数は-5.62%であるのに対し、日経平均株価は-5.72%、そして独DAX指数は-9.64%、仏CAC40指数は-10.77%、伊FTSE MIB指数は-15.93%と更に下げ幅が大きくなっています。日本株は急激な円高進行の影響、独仏伊は英景気下振れのユーロ圏への波及懸念があると思われます。なお英国株は、主要企業の国内売上比率が30%程度でポンド安の恩恵を受けやすいとの見方もあります。

金融市場はリスクオフだが信用収縮や金融不安に至っておらず、比較的落ち着いた対処が可能

同期間における他の市場の動きをみると、WTI原油先物価格は-7.54%、S&P世界リート指数は-2.57%と、リスク資産は軒並み下落しています。これに対し、主要国の国債利回りは大きく低下(価格は上昇)しており、投資マネーがリスク資産を避けて安全資産を選好している様子が窺えます。なお英国では景気減速や利下げを織り込む形で10年国債利回りが一気に40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上低下しました。

期間3カ月の米短期国債利回りと米ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)との金利差をテッドスプレッドといい、信用不安の度合いを測る指標として使われます。テッドスプレッドは信用不安が高まると拡大する傾向があり、国民投票日とその後で幾分拡大しましたが、リーマンショック後のような水準にはありません(図表2)。そのため金融市場はリスクオフの状態にあるものの、極端な信用収縮や金融不安には至っておらず、比較的落ち着いた対処が可能と考えます。

160628図表1160628図表2

 

 (2016年6月28日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

 

 

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会