英国民投票の結果と相場の反応

市川レポート(No.268)英国民投票の結果と相場の反応

  • 市場では早朝からEU残留織り込みが加速、その後は調査会社の調査結果に一喜一憂の展開。
  • 開票で離脱優勢が伝わり、リスクオフの動きでドル円は100円割れ、日経平均は15,000円割れ。
  • 英国のEU離脱でドル円や日本株は下値模索の動きに、ただリーマンショックとは状況が異なる。

市場では早朝からEU残留織り込みが加速、その後は調査会社の調査結果に一喜一憂の展開

英国で欧州連合(EU)残留継続の是非を問う国民投票が、日本時間で6月23日の午後3時(現地時間で23日の午前7時)から24日の午前6時(現地時間で23日の午後10時)の間に行われました。投票終了直後に発表された調査会社YouGovによる世論調査では、残留支持52%、離脱支持48%という結果になり、金融市場ではEU残留を織り込む動きが加速しました。

為替市場ではポンドの上昇が目立ち、対ドルでは一時、年初来高値となる1ポンド=1.5018ドル水準まで上昇しました。円は総じて軟調な動きとなり、対ドルでは1ドル=106円84銭付近まで円安が進みました(図表1)。また日経平均株価先物やS&P500指数先物も、為替市場でリスクオフ(回避)の流れが後退するなか、堅調に推移しました。ただその後は為替も株も調査会社が発表する調査結果に一喜一憂する展開がしばらく続きました。

開票で離脱優勢が伝わり、リスクオフの動きでドル円は100円割れ、日経平均は15,000円割れ

日本時間午前8時16分頃、サンダーランド地区の投票結果が公表され、残留39%、離脱61%となりました。これを受け為替市場ではポンドが対ドルで一気に1.4295ドル水準まで下落、ドル円は103円07銭付近まで円が急騰しました。その後も少しずつ開票が進み、全体では残留・離脱が拮抗するなか、日経平均株価は前日比0.6%高の16,333円87銭で寄り付きました(図表2)。

午前中は開票の進捗をにらみ神経質な相場展開が続きましたが、離脱優勢が伝わるとリスクオフの流れが強まり、ドル円は100円を割り込み99円02銭水準までドル安・円高が進行しました。12時44分頃、英BBCが離脱派勝利の予想を出したことを受け、ポンドドルは1.3229ドル水準まで下落、日経平均株価も下げ幅を拡大し、後場に一時14,864円01銭の年初来安値をつけました。

英国のEU離脱でドル円や日本株は下値模索の動きに、ただリーマンショックとは状況が異なる

国民投票は英国のEU離脱という結果になりました。これまでの懸念材料が現実のものとなったことで、先行きの不透明感が強まる恐れがあります。6月22日付けレポート「英国民投票~直前・直後の心構え」でもお話ししたように、日経平均株価が15,000円を割り込み、ドル円も100円を割り込んで円高が進んだため、今後は世界的な金融市場の混乱度合いを踏まえた主要国の政策協調に焦点が集まると思われます。

なおリーマンショックの時と異なり、世界の金融市場には潤沢な流動性が存在します。そのため英国のEU離脱によって金融システムの機能が損なわれることはないと考えます。また日米欧の中央銀行は必要に応じ流動性供給を行う見通しですので、少なくとも深刻な金融危機は回避できると思われます。目先、ドル円や日本株は下値を模索する動きが続くと予想されますが、リーマンショックとは状況が異なる点は理解すべきと考えます。

160624図表1160624図表2

 

 (2016年6月24日)

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