日本株~伊勢志摩サミットの評価と次なる焦点

市川レポート(No.254)日本株~伊勢志摩サミットの評価と次なる焦点

  • サミット最大のポイントは財政だったが、市場は早々に結果を織り込み、関心はその後に移行。
  • 補正予算5兆円超は日本株にポジティブ、早期の経済対策と追加緩和期待で一段高の展開も。
  • このほか原油相場と米金融政策も焦点、今後の展開と日本株への影響を見極める必要があろう。

サミット最大のポイントは財政だったが、市場は早々に結果を織り込み、関心はその後に移行

5月27日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)において首脳宣言が採択されました(図表1)。注目された財政に関する表記は、政府支出による経済対策を意味する「財政出動」ではなく、より広範な政策が含まれる「財政戦略」となりました。また安倍首相は前日、世界経済がリーマン・ショック並みの「危機」に陥るリスクについて言及しましたが、首脳間で異論が出たため、「新たな危機に陥ることを回避」という表現にとどまりました。

為替に関しては従来の見解を再確認しただけで、目新しい材料はありませんでした。今回最大のポイントは財政の扱いでしたが、すでに各国が足並みを揃えて財政出動に取り組むことは困難との見方がサミット前に広がっていました。そのため市場への織り込みが進んでいた分、首脳宣言に対する日本株と円相場の反応は限定的でした。ただ大きな失望とならなかったのは、市場の関心がすでにサミット後へ移っていたためと思われます。

補正予算5兆円超は日本株にポジティブ、早期の経済対策と追加緩和期待で一段高の展開も

次なる焦点は、日本の具体的な行動ですが、政府・与党は首脳宣言で消費増税再延期への理由付けが得られたと考えているように思われます。実際ここ数日で、通常国会会期末の6月1日に再延長を正式表明、再延長の期間は2年半、5兆から10兆円規模の第2次補正予算編成など、より具体的な報道が多くみられるようになりました。その一方、野党の内閣不信任決議案提出と衆議院解散という可能性も残っていると考えられます。

再延長自体は市場に織り込まれつつありますので、第2次補正予算の規模に注目が集まります。5兆円超となれば、日本株にとってポジティブな材料と考えます。また早々に経済対策が打ち出された場合、6月15日、16日における日銀金融政策決定会合における追加緩和への期待も高まります。政策相場が継続すれば、日経平均株価が17,000円台を回復する展開も予想されます。

このほか原油相場と米金融政策も焦点、今後の展開と日本株への影響を見極める必要があろう

ただ再延期の場合、社会保障の財源をどこに求めるか、財政健全化をどう進めるかについての説明が求められます。なお国外に目を向けると、6月2日に石油輸出国機構(OPEC)総会が開催されます。生産量維持については、4月の主要産油国による会合でも合意に至っておらず、進展は期待し難いと思われます。これが高値圏にある原油相場にとって売りの口実となれば、日本株への下押し圧力も強まる恐れがあるため注意が必要です。

また米金融政策の行方も市場の焦点です。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は5月27日の講演で、数カ月内に(in the coming months)利上げするのがおそらく適切と述べました。そのため6月2日に発表される5月の米雇用統計が、労働市場の改善継続を裏付ける内容となれば、6月利上げの確率が一段と上昇すると思われます(図表2)。その際、世界の金融市場に大きな動揺がみられなければ、日本株が米利上げのイベントを乗り切る可能性は高まるとみています。

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 (2016年5月30日)

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