日米重要イベントとドル円相場の展望

市川レポート(No.252)日米重要イベントとドル円相場の展望

  • 消費増税再延期と5兆円程度の第2次補正予算編成、3次元に近い追加緩和などは円安材料。
  • 良好な雇用統計とイエレン議長による利上げ正当性の言及などはドル高材料、ドル円は円安に。
  • 円高リスクの把握は必要も徐々に緩和の見通し、年内は最大で115円程度の円安水準を予想。

消費増税再延期と5兆円程度の第2次補正予算編成、3次元に近い追加緩和などは円安材料

ドル円は5月3日に一時1ドル=105円55銭水準をつけた後、ドル高・円安方向に反転し、足元では110円台の定着を試す動きがみられます。背景には、日本政府の経済対策や日銀の追加緩和に対する期待、そしてにわかに浮上した6月の米利上げ観測があると思われます。そこで今回は、目先の日米重要イベントを整理し、ドル円相場の動きを展望します。

前回のレポートでも触れましたが、日本政府の経済政策については消費増税に関する判断と補正予算の規模がポイントです。6月1日に通常国会が閉会しますが、それに近いタイミングで消費増税再延期と5兆円程度の第2次補正予算編成が表明されれば、相場は円安・株高で反応しやすくなると思われます。また6月15日、16日の日銀金融政策決定会合でも、「量」・「質」・「金利」の3次元緩和に近い形での政策決定となれば、一段の円安・株高材料になると考えます。

良好な雇用統計とイエレン議長による利上げ正当性の言及などはドル高材料、ドル円は円安に

米国では6月14日、15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む利上げ確率は5月25日時点で約34%です。利上げ予測に影響を与える可能性が大きいイベントとしては、5月27日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のハーバード大学における講演、6月3日の5月雇用統計、6月6日のフィラデルフィアにおけるイエレンFRB議長の講演などです。

4月開催のFOMC議事要旨が予想外にタカ派的な内容だったため、市場ではイエレン議長の発言に注目が集まっています。5月の雇用統計で労働市場の改善が続いていることが示され、イエレン議長が利上げの正当性に言及する展開となれば、6月の利上げ確率が上昇し、米金利上昇とドル高につながる公算が大きいと考えます。その場合、ドル円相場は素直にドル高・円安に振れるとみられます。

円高リスクの把握は必要も徐々に緩和の見通し、年内は最大で115円程度の円安水準を予想

ただリスクの把握も必要です。日本の経済対策や追加緩和が市場の失望を誘えば、円買いにつながる恐れがあります。また米利上げの織り込みが過度に進むと、新興国などで再び通貨安・株安となり、一時避難的に円が買われることも予想されます。さらに高値圏にある原油価格に利益確定売りが出た場合や、6月23日の国民投票に向け英国の欧州連合(EU)離脱懸念が再燃した場合は、円高が進行しやすくなります。そして夏以降は米大統領選をにらんだ為替相場のボラティリティ(変動率)上昇も警戒されます。

現時点で円高方向のリスクは最大で102円程度を想定していますが、そのリスクは少しずつ円安方向へ緩和されていくとみています。ただ日本政府の経済対策や日銀の追加緩和は市場に期待されているものの、当初のアベノミクスのような大幅な円安を促すことは難しいと思われます。円安方向へはFRBの利上げの舵取りが重要な意味を持つとみられ、仮に市場の波乱なく年2回程度の米利上げが織り込まれれば、年内最大で115円程度の円安水準も意識されると予想します。

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 (2016年5月26日)

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