日経平均18,000円へのシナリオ

市川レポート(No.248)日経平均18,000円へのシナリオ

  • 大型補正予算で裏付けられる経済対策は、市場で5兆~10兆円程度の規模が見込まれている。
  • 消費増税延期と5兆円超の経済対策規模ならば市場は好感、サミットの首脳宣言も注目材料。
  • 日銀3次元緩和は容易ではないが株高要因、政府・日銀の政策に対する市場の期待は高い。

大型補正予算で裏付けられる経済対策は、市場で5兆~10兆円程度の規模が見込まれている

今回のレポートでは政府の経済対策と日銀の追加緩和に焦点をあて、日経平均株価が今後18,000円に向かうシナリオについて考えてみます。経済対策について、現在は15年度補正予算と16年度予算が前倒し執行され、4月から9月までの間に、公共事業など10兆円規模の執行が目標とされています。ただ10月以降は公共事業が減少してしまうため、与党内には大型補正予算の編成が必要との見方が広がっているように見受けられます。

大型補正予算は、近々発表予定の経済対策の裏付けとなります。ニッポン一億総活躍プラン、骨太の方針、成長戦略がまもなく閣議決定され、これらのうち即効性の高いものが5月26日、27日の伊勢志摩サミットで経済対策の骨格として示される見通しです。なお経済対策の規模は、市場で5兆~10兆円程度が期待されていますが、5月18日の1-3月期実質GDP1次速報値の結果や、消費増税先送りの有無にも影響を受けると考えられます(図表1)。

消費増税延期と5兆円超の経済対策規模ならば市場は好感、サミットの首脳宣言も注目材料

消費増税が先送りとなれば、経済対策の規模はそれほど大きくならない可能性があります。すでに市場では先送りの期間にも関心が高まっており、増税を2020年4月まで3年間延長し、2018年夏までに衆議院を解散、安倍首相の自民党総裁任期を同年9月から2年ほど延長、2019年夏に参議院選挙を迎えるとの見方も浮上しています。仮に消費増税の3年延期と5兆円を超える規模の経済対策であれば、株式市場は好感すると予想されます。

経済対策の中身は、インフラ整備などの公共投資、子育てや介護の環境整備を中心とする労働支援、プレミアム商品券発行などの消費喚起、などが考えられます。規模のみならず、持続的な経済成長を促す政策がどれだけ含まれるかが重要なポイントです。また伊勢志摩サミットでは協調的な財政出動の合意は難しいとみられますが、首脳宣言でどれだけ足並みを揃えたメッセージを打ち出せるかも注目材料です。

日銀3次元緩和は容易ではないが株高要因、政府・日銀の政策に対する市場の期待は高い

6月15日、16日の日銀金融政策決定会合で、仮に量・質・金利の3つの次元で緩和することになれば、市場は株高で反応すると思われます。ただ量的緩和はすでに国債の品薄感も強く、マイナス金利も短期金融市場の流動性低下につながっていることから、判断は容易ではありません。そのため経済対策で国債が追加発行された場合や、6月9日に基準比率が大きく引き上げられ、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高が増加した場合は、国債需給の改善や、金融機関のマイナス金利の負担軽減につながると考えられます(図表2)。

見通しではなく、あくまで1つのシナリオですが、消費増税の3年延期と5兆円を超える規模の経済対策、日銀の3次元緩和という流れになれば、日経平均株価が節目の18,000円を目指す展開も想定されます。ただ6月23日には英国で欧州連合(EU)加盟継続の是非を問う国民投票が実施され、警戒感から世界の金融市場が不安定になる恐れもあります。その影響を和らげるためにも政府・日銀の政策に対する市場の期待は、ここにきて相当高まっています。

160517図表1160517図表2

 

 (2016年5月17日)

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