どこまで進むか円高と株安
市川レポート(No.243)どこまで進むか円高と株安
- 日銀の追加緩和見送り、米財務省の監視リスト設定、日本のゴールデンウィークが重なり円急騰。
- 日経平均は4月8日安値の15,471円80銭水準が意識され、あく抜け感が出るのは当面先か。
- ただ世界的なリスクオフではなく過度な悲観は不要、5月の経済対策やサミットの動向に注目。
日銀の追加緩和見送り、米財務省の監視リスト設定、日本のゴールデンウィークが重なり円急騰
日銀が追加緩和を見送った4月28日以降、投機筋を中心に円を買い戻す動きが強まっています。ドル円は5月2日の東京外国為替市場で、1ドル=106円14銭水準までドル安・円高が進行しました。4月6日付けのレポートで、106円台半ばレベルや節目の105円辺りをドル安・円高の目途とお話ししましたが、ここにきて節目の105円が視野に入ってきました(図表1)。
米財務省は4月29日、半期の為替報告書で日本や中国など5カ国・地域を「監視リスト」に指定しました。従って「日銀の金融政策は手詰まり状態で、日本政府も簡単に円売り介入には動けない」とみた投機筋が積極的に円を買っていることは容易に想像できます。また日本がゴールデンウィークを迎えたことで市場参加者が減少し、為替レートが変動しやすくなったことも、円買いポジション積み増しの好機になったと思われます。
日経平均は4月8日安値の15,471円80銭水準が意識され、あく抜け感が出るのは当面先か
一方、株式市場に目を向けると、日経平均株価は4月28日に前日比624円安で取引を終え、その後の欧米市場でも株安の動きが顕著となりました。ストックス欧州600指数は4月29日に大幅下落となり、ダウ工業株30種平均は4月28日、29日と続落しました。ただ欧米株の下げは円高というよりも、低調な企業決算や予想を下回る1-3月期米実質GDP速報値の影響が大きかったと思われます。
急速に進んだ円高の影響を最も大きく受けるのはやはり日本株です。すでに円は対ドルで年初来高値を更新しており、日経平均株価は4月8日の取引時間中につけた安値15,471円80銭水準が意識されつつあります(図表2)。日本ではゴールデンウィーク明けに3月期企業の決算発表がピークを迎えますので、円高進行と重なる厳しいタイミングとなれば、あく抜け感が出るのは当面先になる可能性があります。
ただ世界的なリスクオフではなく過度な悲観は不要、5月の経済対策やサミットの動向に注目
さて政府・日銀による円売り介入については、5月26日、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を控え、やはり現時点での実行は難しいと思われます。仮に介入が行われても、円急騰の勢いが一時的に緩和する程度で、円高のトレンドそのものを変える効果は期待できません。むしろサミットにおいて各国による協調財政出動を演出した方が、景気先行き懸念が払拭され、円高トレンドの反転を促しやすいと考えます。
足元ではWTI原油先物価格は堅調に推移しており、またドル安基調のなか新興国通貨には対ドルで底堅い動きがみられるなど、必ずしも世界的に金融市場がリスクオフ(回避)一色になっている訳ではありません。そのため過度な悲観は必要なく、日経平均株価が2月12日の取引時間中につけた安値14,865円77銭を直ちに更新する可能性は低いと思われます。投機的な「円買い・日本株売り」を抑制する意味でも、5月発表予定の政府の経済対策やサミットの動向は重要な材料とみています。
(2016年5月2日)
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