ドル安・円高の落ち着きどころ

市川レポート(No.233)ドル安・円高の落ち着きどころ

  • 3月来複数の要因が重なったことでドル安・円高の流れが加速、ドル円は一時109円台へ。
  • 「ドル全面安」では過度な円高懸念は不要だが、「円全面高」では一段の円高への警戒が必要。
  • すぐ到達ということではないが、106円台半ばレベルや節目の105円辺りがドル安・円高の目途。

3月来複数の要因が重なったことでドル安・円高の流れが加速、ドル円は一時109円台へ

4月5日のニューヨーク外国為替市場で、ドル円は一時1ドル=109円95銭水準までドル安・円高が進行しました(図表1)。この日は世界的に株価が下落し、リスクオフの動きが強まったことで円が主要通貨に対し上昇しました。ドル円については、3月来複数の要因が重なったことで、ドル安・円高の流れが加速したと考えられます。そこでドル円相場の先行きを予想するにあたり、まずこれまでの要因を整理したいと思います。

1つめは3月15日、16日のFOMC声明および3月29日のエコノミック・クラブにおけるイエレンFRB議長の講演です。米金融当局のハト派スタンスが明確となり、「ドル全面安」の展開となりました。2つめは3月下旬からの原油反落です。4月17日予定の主要産油国による会合を控え、増産凍結に対する懐疑的な見方が強まり、株式などリスク資産が総じて値を崩すなか、「円全面高」の展開となりました。

「ドル全面安」では過度な円高懸念は不要だが、「円全面高」では一段の円高への警戒が必要

「ドル全面安」の局面では、新興国通貨、株式相場、商品相場は総じて上昇しやすく、金融市場はリスクオンとなる傾向があります。通貨は安い順に①ドル<②円<③新興国通貨等となります。一方、「円全面高」の局面では、新興国通貨、株式相場、商品相場は総じて下落しやすく、金融市場はリスクオフとなる傾向があります。通貨は安い順に①新興国通貨等<②ドル<③円となります。

つまり「ドル全面安」では、円は対ドルで円高となりますが、ドル以外の通貨に対しては円安となる場合が多く、リスク資産の上昇を伴うのであれば、過度な円高懸念は不要です。これに対し「円全面高」では、円はドルに対してもドル以外の通貨に対しても円高となり、リスク資産の下落を伴うことも多いため、一段の円高への警戒が必要となります。また4月5日にラガルドIMF専務理事が、世界の景気回復に対するリスクが増していると発言し、「円全面高」の動きを強める結果となりました。

すぐ到達ということではないが、106円台半ばレベルや節目の105円辺りがドル安・円高の目途

このように3月来、ドル円相場は「ドル全面安」から「円全面高」の流れに転じつつあるように思われます。目先は円高進行に対する政府の言動に注目が集まりますが、報道によれば安倍首相は4月5日、通貨安競争は避けなければならないと述べており、市場では円売り介入の可能性は低いとの見方が強まっています。そこで昨日のレポートでも触れたフィボナッチ・リトレースメントで客観的な下値の目安を確認してみます。

2011年10月安値の75円35銭水準から2015年6月高値の125円86銭水準までの上昇幅を基準とすれば、38.2%押し水準が106円57銭です(図表2)。すぐに到達するということではありませんが、この106円台半ばレベルや節目の105円辺りがドル安・円高の目途と考えられます。目先、ドル高・円安方向へ戻るきっかけとしては、円相場の過度な変動を懸念する通貨当局者の発言や、原油相場の反転上昇などが考えられます。

160406 図表1160406 図表2

 

 (2016年4月6日)

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