原油反落~円相場と日本株のゆくえは?
市川レポート(No.232)原油反落~円相場と日本株のゆくえは?
- サウジ副皇太子の発言で増産凍結に懐疑的な見方が広がり、WTI原油先物価格は大幅安に。
- 投機筋の売りポジションは8週ぶりに増加、テクニカル分析による下値目途は32~33ドル台。
- 4月17日の会合は原油のみならず円相場や日本株にも影響を与える恐れがあり、注意が必要。
サウジ副皇太子の発言で増産凍結に懐疑的な見方が広がり、WTI原油先物価格は大幅安に
WTI原油先物価格は2月に1バレル=26.19ドル(1月20日安値)と26.05ドル(2月11日安値)でダブルボトムを形成した後、3月に入りネックラインとなる34.82ドル(1月28日高値)を上値抜けて上昇基調を強めました。また3月には、サウジアラビアやロシアなど主要産油国が増産凍結に向けた会合を4月に開催すると報じられ、これも原油相場を押し上げる一因になったとみられます。
WTI原油先物価格は3月22日に41.90ドルの高値をつけた後、いったん緩やかに調整する動きとなりました。しかしながら4月1日にサウジアラビアの副皇太子が、イランを含む主要産油国が同調しない限り増産凍結は行わないとの考えを示すと、WTI原油先物価格は大幅安の展開となりました。4月4日の終値は35.70ドルとなり、ほぼ1カ月ぶりの安値水準まで値を戻しています(図表1)。
投機筋の売りポジションは8週ぶりに増加、テクニカル分析による下値目途は32~33ドル台
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表しているWTI原油先物取引のポジションをみると、石油非当業者(Non-commercial)のうち資金運用業者(Managed Money)の売り建玉は、3月29日時点で75,598枚(1枚=1,000バレル)でした。図表2の通り、8週間ぶりに売りポジションが増加したことになります。前述の会合は4月17日の予定ですが、投機筋は早くも増産凍結に懐疑的な見方を強めていることが分かります。
足元の原油相場の動きから投機筋の売り建玉は3月29日以降も増加していると推測されるため、原油価格はしばらく下値リスクへの警戒が必要です。そこでフィボナッチ・リトレースメントというテクニカル分析で客観的な下値の目安を確認してみます。2月11日安値の26.05ドルから3月22日高値の41.90ドルまでの上昇幅を基準とすれば、50%押し水準が33.97ドル、38.2%押し水準は32.10ドルで、これらが下値目途となります。
4月17日の会合は原油のみならず円相場や日本株にも影響を与える恐れがあり、注意が必要
原油安が進むと、エネルギー関連企業の業績悪化⇒関連業種の株価下落という連想が働きやすくなります。また米国のハイイールド債券(低格付け債券)市場はエネルギー関連企業の起債が多いことから、原油安⇒エネルギー企業の業績悪化⇒ハイイールド債券の債務不履行(デフォルト)の増加⇒信用不安という思惑も強まります。さらに原油安⇒産油国の財政悪化⇒オイルマネーの投資引き上げ⇒世界同時株安との懸念も浮上します。
このように原油安は世界的なリスクオフの動きを強める材料になりやすく、4月5日の東京市場でドル円が111円台を割り込んだことや、日経平均株価が16,000円を下回ったことは、足元の原油安を嫌気した側面があるように思われます。ただ目先、増産凍結に関するポジティブなニュースが出れば、原油は下げ止まり、円高と日本株下落の一服につながる可能性があります。4月17日に予定されている会合は、原油のみならず円相場や日本株にも影響を与える恐れがあるため、最終的にどのような結果となるか注意が必要です。
(2016年4月5日)
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