4月以降の日本株展望

市川レポート(No.227)4月以降の日本株展望

  • 3月の重要イベントは市場を混乱させることなく終了、ハト派的なFOMCはリスクオフ後退に寄与。
  • ドル全面安の円高なら日本株への影響は限定的、4月以降は政策期待が株価を支える展開も。
  • ただ企業業績の見通しは楽観できない状況、日経平均株価は18,000円が当面の上値目途。

3月の重要イベントは市場を混乱させることなく終了、ハト派的なFOMCはリスクオフ後退に寄与

3月を振り返ると、5日からの中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)、10日の欧州中央銀行(ECB)理事会、14日、15日の日銀金融政策決定会合、15日、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)など、重要イベントが目白押しでした。ただいずれも市場を混乱させるような結果とはならなかったため、終わってみれば足元の日経平均株価は17,000円前後まで値を戻しています。

こうしたなか相場の潮目に変化を与えたイベントはFOMCでした。今回は予想外にハト派的な内容だったことから、為替市場ではドルが全面安となり、新興国通貨や資源国通貨が対ドルで上昇しました。新興国や資源国では、通貨安懸念の後退で過度な経済不安が和らぎ、株高が顕著となった他、原油など商品相場も堅調に推移しました。つまりFOMCを経て市場にリスクオフ(回避)後退の動きが広がったといえます。

ドル全面安の円高なら日本株への影響は限定的、4月以降は政策期待が株価を支える展開も

ドル円は3月17日に1ドル=110円67銭水準までドル安・円高が進行しました。ただこれは前述の通りドル全面安によるもので、リスクオフの円買いによるものではありません。またドル安と原油の持ち直しで、米国の製造業とエネルギー企業が息を吹き返した場合、米国経済や株式市場には強い追い風となります。このような状況下では、為替が幾分ドル安・円高に振れたとしても、日本株への下押し圧力は限定される可能性があります。

2月27日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、機動的な財政政策の実施が共同声明に盛り込まれました。日本は5月26日、27日に伊勢志摩サミットを控え、また7月には参院選が予定されており、景気対策を打ち出しやすいタイミングにあります。市場では日銀の追加緩和観測も根強いことから、4月以降は政府・日銀に対する政策期待が日本株を支える展開も予想されます。

ただ企業業績の見通しは楽観できない状況、日経平均株価は18,000円が当面の上値目途とみる

伊勢志摩サミットの準備会合とされる国際金融経済分析会合では、スティグリッツ米コロンビア大教授およびクルーグマン米プリンストン大名誉教授(ともにノーベル経済学賞を受賞)から、消費増税先送りの提言がありました。2016年の春闘も低調な見通しであることから、消費増税延期と衆参同日選挙も現実味を帯びつつあるように思われます。具体的な動きがみえてくれば、取り敢えず日本株は好感すると考えます。

しかしながら肝心の企業業績見通しは楽観できません。東証株価指数(TOPIX)構成企業について、12カ月先の予想1株あたり利益(EPS)は足元で鈍化傾向が強まり(図表1)、リビジョンインデックスは業績を下方修正する企業の割合が増えていることを示唆しています(図表2)。現時点で、弊社コアリサーチユニバース216社の経常利益は、今年度が前年度比+7.6%、来年度は同+5.6%を予想しています。株価の一段高には企業業績の改善が待たれることから、日経平均株価では18,000円が6月頃までの当面の上値目途とみています。

160324 図表1160324 図表2

 

 (2016年3月24日)

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