FOMCの結果分析と今後の相場見通し

市川レポート(No.225)FOMCの結果分析と今後の相場見通し

  • 声明では景気判断が上方修正されたが、世界経済と金融情勢は依然リスクとの見方が示された。
  • イエレン発言はバランスに配慮したものとなり、またメンバーの2016年の利上げ見通しは下方修正。
  • 次回利上げは6月の可能性、目先リスクオフが一段の後退ならば、円安と日本株上昇の期待も。

声明では景気判断が上方修正されたが、世界経済と金融情勢は依然リスクとの見方が示された

3月15日、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場予想よりもハト派的なものとなりました。以下、ポイントを整理しながら今後の株式市場や為替市場への影響を考えます。はじめにFOMC声明を検証します。景気の現状判断は上方修正された一方、物価は「ここ数カ月上向いた」ものの低水準との判断が維持され、「物価動向を注意深く監視する」という文言が新たに加わりました(図表1)。

また経済活動と労働市場の見通しに対するリスクバランスの判断は引き続き見送られました。そして前回1月の声明に盛り込まれた「世界経済と金融情勢を注意深く監視する」との表記は、「世界経済と金融情勢は引き続きリスクをもたらしている」に変更されました。米連邦準備制度理事会(FRB)は外部要因への警戒を緩めておらず、この点が今会合での政策据え置き判断に大きく影響したものと思われます。

イエレン発言はバランスに配慮したものとなり、またメンバーの2016年の利上げ見通しは下方修正

次にイエレンFRB議長の記者会見に目を向けます。発言内容は、全体としてバランスに配慮したものとなりました。ただ冒頭で、今回声明に記載された「世界経済と金融情勢は引き続きリスクをもたらしている」という部分に言及するなど、ハト派色の強いメッセージもみられました。その一方、「見通しに対するリスクは減少しつつある」、「4月の会合も予断を持たずに開かれる」と述べ、近い将来の利上げの可能性も残しました。

そしてFOMCメンバーの見通しでは、メンバーが適切と考える政策金利の水準について、「点(ドット)」分布が下方修正されました。前回12月時点では2016年に4回の利上げが示唆されましたが、今回は2回に減少しました。これは2016年の実質GDPと物価に関するメンバーの見通しが下方修正されたことや、前述の世界経済と金融情勢のリスクに対する慎重な姿勢が反映されたためと思われます。

次回利上げは6月の可能性、目先リスクオフが一段の後退ならば、円安と日本株上昇の期待も

FOMC声明の発表後、米国株は上昇、米10年国債利回りは低下、為替市場では米ドルが全面安という展開になりました。ドル円は112円台へ下落し、新興国通貨や資源国通貨は対米ドルで上昇しました。このように、FOMCが予想外にハト派的となったことから、マーケットはリスクオン(選好)で反応しています。大きな動揺は避けられたという点で、今回のFOMCは評価できると思います。

ここから米国物価の持続的な伸びが確認され、世界経済と金融情勢が更なる安定に向かえば、6月14日、15日のFOMCで利上げが行われる可能性は高まります。また今回のFOMCを経て、目先の市場でリスクオフ(回避)が一段と後退した場合、円安と日本株上昇の動きも期待できます。ただ緩やかな米利上げペースの織り込みを背景に、ドル高・円安の勢いはそれほど強くないと思われます。また日本株は4月以降の政府・日銀による政策期待の高まりが上昇のカギを握ることになるとみています。

160317 図表1 160317 図表2

 

 (2016年3月17日)

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