リスクオフ相場~リーマン・ショックとの相違点
市川レポート(No.201)リスクオフ相場~リーマン・ショックとの相違点
- 証券化商品の価値急落で2008年にリーマンが破綻、金融危機が発生して株価は暴落へ。
- 中国の景気減速や原油安は金融システムにダメージを与えるものではなく、過度な懸念は不要。
- 日本株の不安定さは投機的取引の影響とみられ、背景を理解すれば冷静に行動することが可能。
証券化商品の価値急落で2008年にリーマンが破綻、金融危機が発生して株価は暴落へ
世界の金融市場は年初から混乱が続いており、MSCI世界株価指数(米ドル建て)は年初から1月21日までの間で既に10.2%下落しました。そのため一部には、リーマン・ショックに匹敵する金融危機に発展するのではないかと懸念する向きもみられます。そこで今回のレポートでは、当時危機が発生した背景と金融市場の動きを振り返り、現在の相場環境と比較してみます。
一般にリーマン・ショックとは、2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻を機に発生した世界的な金融危機のことを指します。当時は米住宅ブームを背景に、信用力の低い借り手向けのサブプライム住宅ローンが急増し、それを証券化した金融商品のビジネスに多くの欧米金融機関が関わっていました。しかしながら住宅ブームの収束とともに返済延滞が発生すると証券化商品の価格が暴落し、金融機関は巨額の損失を被りました。
中国の景気減速や原油安は金融システムにダメージを与えるものではなく、過度な懸念は不要
その結果、リーマン・ブラザーズが破綻し、金融機関は危機的な状況に陥りました。市場では信用収縮によってマネーが干上がり、世界的に株価が暴落して経済活動が停滞しました。現在の相場で主なリスク要因になっているのは中国の景気減速と原油安です。いずれも関連資産を金融機関が大量に抱えている訳ではないので、例えば原油価格の下落で金融機関に巨額の損失が発生することはありません。
そのため今回のリスク要因は、金融機関の経営を揺るがして金融システムに壊滅的なダメージを与える類のものではありません。この点を踏まえれば、年初からの混乱がリーマン・ショック並みの金融危機に至るとの心配は、やはり行き過ぎと思われます。なお現時点の信用スプレッドは平時よりも拡大しつつありますが、日米欧の金融機関が十分な余剰資金を保有していることなどもあり、2008年当時のような状況にはありません(図表1)。
日本株の不安定さは投機的取引の影響とみられ、背景を理解すれば冷静に行動することが可能
日経平均株価は2015年6月24日から2016年1月21日まで終値ベースで23.2%下落していますが、金融危機当時は2007年7月9日から2009年3月10日まで終値ベースで61.4%下落しました。今回の相場混乱は金融システムの動揺によるものではないため、60%超もの下げを警戒する必要はないと考えます。中国経済や原油相場については今後の動向に注意が必要ですが、パニックになるほどのリスク要因ではありません。
図表2は日本株の現物と先物の売買代金の推移を示したものですが、このところ現物に比べて先物の取引金額が急増していることが分かります。そのため足元の日本株の変動率拡大には、先物を使った投機的取引が大きく関与していると推測されます。ただ投機的な日本株売りのポジションは、将来的には買い戻しでクローズされることになります。以上の諸点を理解しておけば、不安定な相場でも冷静に行動することが可能と思われます。
(2016年1月25日)
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