12月FOMC直前チェックポイント

市川レポート(No.187)12月FOMC直前チェックポイント

  • 今回の焦点は市場に混乱なく緩やかな利上げペースを織り込ませることができるか否か。
  • 具体的手段となるFOMC声明は第3段落に、政策金利見通しはドット分布の変化に注目。
  • イエレン議長の記者会見は特に重要で、利上げ後のFF金利水準も利上げ成否のカギに。

今回の焦点は市場に混乱なく緩やかな利上げペースを織り込ませることができるか否か

 米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)においてフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.0%~0.25%から0.25%~0.50%へ引き上げる見通しです。ただ焦点はすでに利上げのペースに移っていることから、今回のFRBの課題は、市場に混乱を招くことなく緩やかな利上げペースを織り込ませることができるか否かということになります。

 FRBによる市場との対話は、①FOMC声明、②FOMCメンバーの経済および政策金利の見通し、③イエレン議長の記者会見、これらを通じて行われることになります。基本的なメッセージは「経済状況を慎重に見極めながら緩やかなペースで利上げを行っていく」ことになると思われます。これが具体的にどのような形で示されるのか、①~③における注目ポイントについて以下解説します。  

具体的手段となるFOMC声明は第3段落に、政策金利見通しはドット分布の変化に注目

 ①については、第3段落の「金融政策の運営方針」が最も重要です。10月声明では利上げ判断に関して「次の会合」という文言を入れましたが、今回はこれを削除してハト派的な印象を強める可能性があります。またこれまでフォワードガイダンスは利上げの2条件(労働市場がさらに幾分改善すること、物価上昇率が中期的に2%の目標に戻っていくと合理的に確信できること)を示してきました。これを引き続き追加利上げの条件とするのか、あるいは緩やか(gradual)というメッセージを含む内容に刷新するのか、見極めが必要です。

 ②については、特に政策金利の見通しが注目されます。前回9月の見通し(図表1)よりも、各予想値である「点(ドット)」の分布の中心が低下していれば、市場は緩やかな利上げペースを織り込む可能性があります。ドットは各メンバーの単なる予想に過ぎず、FRBの政策意図を示す手段ではありませんが、市場はこれを重視する傾向があります。そのため今回ドットの分布に変化がなければ、市場の政策金利見通しとの乖離は残り(図表2)、その際の相場の反応が懸念されます。

イエレン議長の記者会見は特に重要で、利上げ後のFF金利水準も利上げ成否のカギに

 ①~③のうち特に重要な役割を果たすのが、③のイエレン議長の記者会見です。ここで経済状況を慎重に見極めながら緩やかなペースで利上げを行っていく旨のメッセージが繰り返し強調されると思われます。またイエレン議長は、保有国債などの償還金は再投資を続け、雇用と物価が政策目標と一致する水準に近づいても低金利を維持する方針にも言及するとみられます。これらの基本方針は引き続きFOMC声明でも明記されると予想します。

 なおFOMC声明とは別に実行文書(Implementation Note)が発表され、具体的な利上げの手段が示される見通しです。ここで前回のレポートでお話しした通り、超過準備預金金利(IOER)と翌日物リバースレポ金利(RRR)が0.25%ずつ引き上げられると思われます。なお翌日物リバースレポの総額3,000億ドルの金額制限は、引き上げまたは一時的な撤廃が見込まれ、公定歩合(民間銀行がFRBから資金を借り入れるときの金利)も0.75%から1.00%への引き上げが予想されます。そして利上げ後、実際のFF金利がどの水準に落ち着くのかも、利上げの成否を見極めるカギとなります。

151216 図表1151216 図表2

 (2015年12月16日)

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