2016年に投票権を持つFOMCメンバー

市川レポート(No.180)2016年に投票権を持つFOMCメンバー

  • 金融政策を議論し決定するFOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持つ。
  • 2016年に輪番制で投票権を持つ地区連銀総裁は、4名のうち3名はタカ派とみられる。
  • タカ派のメンバーが増えても、今回の利上げペースは極めて緩やかなものになる見通し。

金融政策を議論し決定するFOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持つ

 米国の連邦準備制度(The Federal Reserve System)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。その最高意思決定機関がワシントンにある連邦準備制度理事会(The Board of Governors of the Federal Reserve System)で、一般的にFRB(The Federal Reserve Board)という略称で呼ばれています。FRBは連邦政府の1機関であり、7名の理事(うち議長1名、副議長1名)で構成されています。

 またFRBはその下に12の地区連邦準備銀行(地区連銀)を抱え、業務に関する広範な監督権限を付与されています。なお金融政策の決定に関する議論は連邦公開市場委員会(FOMC)で行われ、7名の理事(現在2名空席)と5名の地区連銀総裁が投票権を持ちます。このうち理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任メンバーで、残りのメンバーはその他の地区連銀総裁が輪番制で1年間担当します。  

2016年に輪番制で投票権を持つ地区連銀総裁は、4名のうち3名はタカ派とみられる

 したがって投票権を持つFOMCメンバーのうち4名は毎年入れ替わることになります。輪番制で2015年に投票権を持ったのは、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの各地区連銀総裁でした。そして2016年は、セントルイス、カンザスシティ、クリーブランド、ボストンの各地区連銀総裁が投票権を持つことになります。そこで来年の米金融政策を見通す上で、この4名の金融政策スタンスを確認してみます。 

 セントルイス地区連銀のブラード総裁、カンザスシティ地区連銀のジョージ総裁、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は一般に、物価を重視するタカ派とみられています。これに対しボストン地区連銀総裁のローゼングレン総裁は一般に、景気を重視するハト派とみられています。常任メンバーと2015年に投票権を持つ地区連銀総裁の金融政策スタンスを勘案すると、来年のFOMCは今年よりもタカ派色が強くなる見通しです(図表1)。

タカ派のメンバーが増えても、今回の利上げペースは極めて緩やかなものになる見通し

 市場では12月15日、16日のFOMCで利上げが行われるとの見方が優勢となっており(図表2)、すでに焦点はその後の利上げペースに移りつつあります。通常の利上げ局面では、タカ派のFOMCメンバーが多いと利上げペースは早まりやすいとも考えられますが、今回は過去に例のない非伝統的金融政策からの脱却となるため、それほど単純な話ではないと思われます。

 11月18日に公表されたFOMC(10月27日、28日開催分)議事要旨では、「FOMC参加者は総じて金融緩和を徐々に(gradually)取り除くことが恐らく適切であろうという点で合意した」と記されていました。またクリーブランド地区連銀のメスター総裁も11月19日、「(利上げ後の軌道は)漸進的な軌道(gradual path)になるとみる根拠は多い」と述べています。これらから、FRBが慎重なペースで利上げを進める意向であること、そしてタカ派のメンバーもそれを良く理解していることがうかがえます。それゆえ現時点では、仮に12月に利上げが行われたとしても、その後の利上げは半年に1回のペースがせいぜいではないかと考えます。

151126 図表1151126 図表2

 (2015年11月26日)

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