日経平均株価と節目の2万円

市川レポート(No.177)日経平均株価と節目の2万円

  • 日経平均は2万円を前に足踏みも、株価を取り巻く各種指標は地合い好転の兆しを示唆。
  • 年前半の株高局面でみられた、海外投資家の「順張り」と個人の「逆張り」が復活。
  • 利益見通しは伸び悩むも支援材料は散見、政府・日銀の政策発動が一段高のカタリスト。

日経平均は2万円を前に足踏みも、株価を取り巻く各種指標は地合い好転の兆しを示唆

 11月20日の日経平均株価は1万9,879円81銭と前日比20円(0.1%)高で取引を終えました。19日の取引時間中には一時19,959円06銭まで上昇しましたが、心理的な節目でもある2万円の大台を前に足踏みとなりました。ただこのところ株価を取り巻く各種指標をみると地合い好転の兆しもみられ、8月20日以降途絶えていた終値での2万円台回復の成否に今後注目が集まります。

 まずは国内のマクロ指標に目を向けると、日銀が11月19日に発表した10月実質輸出は、前月比+1.1%と9月の同+2.1%から2カ月連続で増加しました。輸出に底打ち感が出始めるなか、市場でも中国の景気減速に対する過度な懸念は後退しつつあり、夏場にみられたような「中国の景気減速→日本の輸出減→日本の景気減速」という思惑で株価が売られる局面からはすでに脱しているとみられます。  

年前半の株高局面でみられた、海外投資家の「順張り」と個人の「逆張り」が復活

 次に東京証券取引所が公表している投資部門別株式売買動向をみると、11月第2週(9日から13日)における海外投資家の買い越し額は3,003億円と4週連で買い越しとなりました。年初からの累計は依然として売り越しですが(図表1)、相場の流れに沿って売買する「順張り」傾向の海外投資家が、足元で買い越しに転じていることは相場のセンチメント(心理)にはプラスに働くと思われます。

 一方、個人の動きに目を向けると、11月第2週の売り越し額は3,298億円で、7週連続の売り越しとなりました。個人は海外投資家とは対照的に、相場の流れに逆らって売買する「逆張り」の傾向がみられます。海外投資家の「順張り」と個人の「逆張り」は、年前半の株高局面でみられた組み合わせです。足元では再びこの組み合わせがみられるようになっており、相場の地合いは好転しつつあると解釈することができます。 

利益見通しは伸び悩むも支援材料は散見、政府・日銀の政策発動が一段高のカタリスト

 なお12カ月先の予想EPS(1株あたり利益)をみると、足元でやや伸び悩んでいることが確認できます。これに対し12カ月先の予想PER(株価収益率)は過度な割安感が修正され、直近では14.5倍と過去5年平均の13.3倍を上回る水準まで戻っています(図表2)。そのため利益見通しが改善しないまま日本株がここから一段高となった場合、次第に割高感が増していくことになるため、やや注意が必要です。

 現時点で、弊社コアリサーチユニバース216社の経常利益は、今年度が前年度比+15%程度、来年度は同+8%程度の伸びを予想しています。国際商品価格の低迷は懸念されますが、訪日外国人客数の順調な増加でインバウンド消費の見通しが良好であることや、前述の中国景気に対する過度な懸念の後退、そして輸出に底打ち感が出始めていることなどは、関連企業の業績を支える好材料と考えます。また市場では政府・日銀の政策支援に対する期待が高く、引き続きこれら政策の発動が日本株一段高のカタリスト(触媒)になると思われます。

151120 図表1151120 図表2

 (2015年11月20日)

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