本邦企業の4-9月期決算と今後の展望
市川レポート(No.173)本邦企業の4-9月期決算と今後の展望
- 主要企業の4-9月期決算発表が続いており、前年同期比増収増益での着地が見込まれる。
- 業種別にみると鉄鋼・機械などが苦戦する一方、電気・輸送用機器・陸運などは好調。
- 外部環境の早期改善は期待し難く、政府・日銀の政策発動が日本株上昇のカタリストに。
主要企業の4-9月期決算発表が続いており、前年同期比増収増益での着地が見込まれる
本邦企業の4-9月期決算発表が続いていますが、11月9日時点で東証1部上場の3月期決算企業(除く金融)のうち1,000社近くが決算を終え、概要がほぼ明らかになってきました。資源価格の低迷や夏場のチャイナショックなどにより、企業業績に対する懸念が高まり、日本株は8月から9月にかけて大幅な調整を余儀なくされました。そこで実際に業績はどのような影響を受けたのか、今回は主要業種の決算を確認し、今後を展望します。
これまでのところ全体では4-9月期の売上高が前年同期比+5%程度、経常利益は同+15%程度になっている模様です。このまま増収増益での着地が見込まれますが、四半期でみた場合、中国の景気減速の影響から7-9月期の利益の伸びは4-6月期に比べて鈍化しています。また総じてみれば、4-9月期の増益率は製造業よりも非製造業の方が高めになっています。
業種別にみると鉄鋼・機械などが苦戦する一方、電気・輸送用機器・陸運などは好調
ここまでの決算は、好調な業種と不調な業種がはっきりと分かれる結果となっています。減益が目立った業種は「鉄鋼」、「機械」、「鉱業」、「石油・石炭製品」などが挙げられます。「鉄鋼」、「機械」は、中国の景気減速で建機需要が低迷したことや、中国の鉄鋼過剰生産と輸出増加で鉄鋼市況が悪化したことなどが利益圧迫要因となりました。「鉱業」、「石油・石炭製品」は、原油や天然ガスなど資源価格の低迷が、採算悪化や在庫評価損の発生につながりました。
一方、増益が顕著な業種は、「電気・ガス業」、「化学」、「輸送用機器」、「電気機器」、「陸運業」などです。「電気・ガス業」、「化学」は資源価格下落の恩恵を受け、燃料費や原材料費の減少により利幅が拡大しました。また「輸送用機器」や「電気機器」は北米市場の好調や円安が業績の追い風となりました。そして「陸運業」は訪日外国人観光客の需要増加や新設鉄道路線の好調などが利益の押し上げ要因となりました。
外部環境の早期改善は期待し難く、政府・日銀の政策発動が日本株上昇のカタリストに
今年度下期を展望した場合、中国の低成長と資源価格の低位での推移はしばらく続くとの想定は必要と思われます。なお仮にここから米国経済が失速した場合、米利上げ観測の後退と世界経済の先行き不安から急速にドル安・円高が進行する可能性が高く、企業業績や日本株にとって大きなリスクとなります。ただ現時点でこれはあくまでサブシナリオとみています。
今年度通期の経常利益の伸び率は前年度比で1ケタにとどまる公算が大きく、市場では政府・日銀の政策支援に対する期待が高まっています。政府は11月25日までに総合的なTPP関連政策大綱(仮称)を、また11月30日までに1億総活躍社会の実現に向けての緊急対策をそれぞれまとめる方針で、これらが当面の景気対策と共に補正予算の柱になると思われます。一方、円相場や株価が安定しているため日銀は追加緩和を急がないとみていますが、補正予算との兼ね合いや物価動向次第で来年1月にも追加緩和に踏み切る可能性があります。これら政策の発動が日本株上昇のカタリスト(触媒)になると思われます。
(2015年11月12日)
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