夏の下落と秋の反発、そして冬を迎える日本株

市川レポート(No.172)夏の下落と秋の反発、そして冬を迎える日本株

  • 夏の下落:チャイナショックと米利上げ観測に対する強い警戒感から日本株は大幅安に。
  • 秋の反発:米雇用統計を受けた利上げ観測の後退と中国の金融緩和で日本株は反発。
  • 冬を迎える日本株:しばらく値を固め当局の政策をにらみ来年の上昇に備える時間帯へ。

夏の下落:チャイナショックと米利上げ観測に対する強い警戒感から日本株は大幅安に

 日経平均株価は6月24日に年初来高値となる20,952円71銭をつけた後、8月11日には再び20,946円93銭まで上昇しました。しかしながら結局21,000円台を回復することはなく、その後は大きく値を下げる展開となりました。そして日経平均株価は9月29日に16,901円49銭の安値をつけ、年初来高値から実に19.3%下落しました。株安の背景には、中国の景気減速と米国の利上げ見通しに対する市場の強い警戒感がありました。

 この時期は上海株の急落や人民元の切り下げ、新興国通貨の下落も嫌気されました。ただ中国では成長速度の調整や元の国際化は基本方針であり、ソフトランディングに向け金融緩和やインフラ投資が行われています。また仮に米国が年内の利上げを行っても、日本とユーロ圏は強力な金融緩和を実施しています。つまり世界の金融市場は依然として過剰流動性に溢れており、悪材料の影響を相当程度緩和できる状態にあります。実際、現時点で中国は不況に陥っておらず、新興国の通貨危機や世界的な信用収縮も発生していません。  

秋の反発:米雇用統計を受けた利上げ観測の後退と中国の金融緩和で日本株は反発

 それでも夏場のような懸念の強い材料に対し売りが膨らむのは自然なことですが、そこに投機的な動きが加わると、株価は行き過ぎた水準まで下落してしまいます(オーバーシュート)。ただその後は材料の分析が進んで相場への影響が明らかになれば、下げ過ぎた分は買い戻され(オーバーシュートの修正)、相場は落ち着きを取り戻すことが一般的です。日経平均株価は9月29日に前述の安値をつけた後に反発し、11月9日には19,684円41銭まで16.5%上昇しました。 

 反転のきっかけは10月2日に発表された9月の米雇用統計と思われます。非農業部門雇用者数の伸びが予想を大幅に下回ったことで、市場では米利上げ開始時期が後ずれするとの見方が強まり、警戒感が和らぎました。また10月23日に中国人民銀行(中央銀行)が追加緩和を行ったことも中国景気に対する過度な懸念を後退させた可能性があります。今回のリスクオフ(回避)相場も、やはり従来通りの発生と収束の過程を辿ったのではないかとみています。 

冬を迎える日本株:しばらく値を固め当局の政策をにらみ来年の上昇に備える時間帯へ

 11月に入ると、4日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言や6日の10月米雇用統計を受け、年内の米利上げ観測が強まりましたが、日本株はむしろ上げ幅を拡大しました。また東京証券取引所が公表した10月の投資部門別株式売買動向では、海外投資家が5月以来の買い越しに転じました。これらを勘案すれば、日本株の相場の潮目はすでに変わっている可能性があります。 

 なおこれまで発表された主要3月期企業の4-9月期決算をみると、経常利益の伸び率は前年同期比で+15%程度になっている模様です。中国の景気減速の影響を大きく受けた業種もありましたが、主要企業全体が大幅な減益になった訳ではないため、影響はほぼ想定の範囲内と考えられます。ただ今年度通期の経常利益の伸び率は前年度比で1ケタにとどまる見通しで、日本株を更に押し上げるにはやや力不足となっており、株価の一段高には景気対策や追加緩和などの政策発動が待たれます。そのため日経平均株価はしばらく現状水準で値を固め、政府・日銀の動向をにらみつつ、来年の上昇に備える時間帯に入っていくと思われます。

151111 図表1

 (2015年11月11日)

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