米雇用統計を受けた利上げ時期予想と株式市場への影響

市川レポート(No.171)米雇用統計を受けた利上げ時期予想と株式市場への影響

  • 10月雇用統計の結果に、FF金利先物市場が織り込む12月の利上げ確率が一段と上昇。
  • ただダウ平均とナスダックは上昇し、利上げという懸念材料は消化されつつある可能性。
  • 12月利上げの可能性は高く、実施すれば不確実性は消滅するため日本株には好材料に。

10月雇用統計の結果に、FF金利先物市場が織り込む12月の利上げ確率が一段と上昇

 11月6日に発表された10月米雇用統計(速報値、季節調整済み)では、非農業部門雇用者数が前月比27.1万人増加し、市場予想(18.5万人)を大幅に上回りました。9月の増加数は14.2万人から13.7万人に下方修正されましたが、8月は13.6万人から15.3万人に上方修正され、年初からの月間平均増加数は20.6万人と雇用回復の目安となる20万人を上回っています。

 失業率は前月の5.1%から5.0%に低下し、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが完全雇用における失業率とみる水準(4.9%~5.2%)の下限に接近しました。年内の米利上げ観測は11月4日の米連邦準備制度理事会(FRB)高官3名の発言を受けてすでに高まっていましたが、今回の雇用統計の結果を受け、その見方は一段と強まりました。フェデラルファンド(FF)金利先物市場から計算される12月の利上げ確率は11月3日の50%から6日には68%に上昇しています(図表1)。  

ただダウ平均とナスダックは上昇し、利上げという懸念材料は消化されつつある可能性

 これまでは米利上げ観測が高まると、米国株と米国債は下落し、米ドルは全面高になる傾向がありました。しかしながら11月6日の米国株は前日比でS&P500種株価指数が下落したものの、ダウ工業株30種平均とナスダック総合株価指数は上昇して取引を終えるなど、これまでとは異なる動きがみられました。この点を勘案すると米利上げという懸念材料は相場に消化されつつある可能性があります。 

 なお米国債利回りは11月3日から6日にかけて全期間で上昇し、利回り曲線は上方シフトが進みました(図表2)。米金利上昇を背景に、6日のニューヨーク外国為替市場では米ドルが対主要通貨で全面高となりました。ドル円は上値抵抗線として意識されていた90日移動平均線(6日は121円60銭付近に位置)を明確に上抜け、一時123円27銭水準まで上昇し、そのまま高値引けとなりました。大幅上昇となっただけに、この先いったん調整が入る可能性はありますが、1ドル=124円を視野に入れた底堅い展開が予想されます。 

12月利上げの可能性は高く、実施すれば不確実性は消滅するため日本株には好材料に

 11月4日のイエレン議長らFRB高官3名の発言からは、FRBが12月利上げの選択肢を保持している様子がうかがえました。それを踏まえて今回の雇用統計の結果を考えれば、12月利上げの可能性は高まったとみるのが妥当と思われます。次回12月15、16日に開催されるFOMCまでに、米国の雇用や物価の大幅な伸び鈍化や、金融市場の深刻な混乱が発生しない限り、FOMCでは利上げの判断が優勢になるとみられます。 

 最後に米利上げ観測の高まりが日本株に与える影響を考えます。今回、ドル高・円安の反応はいつも通りですが、米株は上昇し、金融市場も落ち着いたままでした。そのため利上げ観測の高まりは、円安と米株高を伴う限り日本株にはプラス要因と思われます。ただ12月に実際に利上げを行う場合は市場の混乱を回避するため、今後の政策方針を含めFRBには十分な市場との対話が求められます。しかしながらいったん利上げを行ってしまえば、その不確実性は消滅しますので、日本株にとっても重しが1つ外れることになり、来年を展望した場合にはむしろ好材料とみています。

151109 図表1151109 図表2

 (2015年11月9日)

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