中長期の日本株を展望する
市川レポート(No.158)中長期の日本株を展望する
- 年内の日本株は国内外の重要イベントをにらみ、下値を固める動きが中心となる見込み。
- 来年には米中の不確実性が払拭され、国内の政策面からも日本株は上昇しやすい局面へ。
- 更に長期では日本株に十分な上昇余地があり、少子高齢化なども投資阻害要因ではない。
年内の日本株は国内外の重要イベントをにらみ、下値を固める動きが中心となる見込み
日本株の先行きを展望する場合、時間軸の設定は極めて重要なポイントになります。時間軸を数カ月とするか、または数年か、或いは数十年かで、目先の材料が株価に与える影響度合いは大きく異なります。例えば数カ月という比較的短い期間であれば、10月13日付のレポート「年内の日本株を展望する」でお話しした通りです。日本株は年内に国内外の重要イベントを控え(図表1)、まずは下値固めの動きが中心になると思われます。
日本については決算内容や経済指標から夏場のチャイナ・ショックの企業業績や実体経済への影響を見極めることになります。追加緩和や補正予算の編成が行われた場合、日本株には追い風です。中国では月次の経済指標や政府の重要会議から、景気動向や経済政策を確認することになります。そして米国では雇用や物価の指標をにらみながら利上げ時期の手掛かりを探ることになります。これらのイベントを経て大きな動揺がなければ、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がると予想します。
来年には米中の不確実性が払拭され、国内の政策面からも日本株は上昇しやすい局面へ
次にもう少し長めの時間軸を考えます。日本では2016年7月に参院選が控えており、安倍政権は今後、経済政策に重点を置くことが予想されます。すでに法人実効税率は2017年度に20%台へ引き下げられる方向に進んでおり、環太平洋経済連携協定(TPP)については2016年1月からの通常国会で協定批准に向けて承認手続きが進められる見通しです。実際に成長戦略が進展していけば、株価の好材料となります。
2016年には遅くとも米国の利上げが開始され、中国の景気動向もよりはっきりすると思われます。そのため今の株価を圧迫している米中の不確実性が払拭され、日本株は上昇しやすい局面を迎えると予想します。ただ2017年4月に予定されている消費増税は、景気と株価の重しになる見込みです。この先も春闘での賃金交渉や年金支給額の改定は、個人消費の動向を読む上で注目すべき材料ですが、消費や投資を下支えるため、日銀は量的・質的金融緩和を長期にわたって継続し、結果的に流動性相場は維持されると考えます。
更に長期では日本株に十分な上昇余地があり、少子高齢化なども投資阻害要因ではない
更に長期の時間軸を考えれば、日本株には十分な上昇余地があると思われます。日本では「稼ぐ力」を強化するため、日本版スチュワードシップ・コードの導入など、昨年以降様々な施策が打ち出されました。これにより企業は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努め、機関投資家が対話を通じてそれを促し、中長期的な投資リターンの拡大を図るという仕組みが出来上がりました。これはチャイナ・ショックなど短期的な相場の悪材料に何ら影響を受けるものではありません。
多くの投資家が懸念する日本の構造問題は財政赤字と少子高齢化です。安倍首相が9月24日に発表した新しい3本の矢(GDP600兆円、出生率1.8、介護離職率ゼロ)はこの問題に対処するものと考えられます。2014年度の名目GDPは約490兆円でしたので、2.1%の名目成長率が10年続けば600兆円に達します。理論上、プライマリーバランスが均衡し、名目利子率が2.1%以下ならば、財政赤字は維持可能です。そして出生率の引き上げと介護離職率ゼロは労働力人口の確保を目指すものです。また今般、1億総活躍社会の実現に向けて担当大臣が新たに設置されました。働く意欲がある高齢者への就業機会が増えれば、年金問題の緩和と労働力人口の維持につながります。財政赤字と少子高齢化は、短期間での解決は困難ですが、日本株への長期投資を阻害する要因ではないと考えます。
(2015年10月15日)
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