「5月の売り逃げ」と「9月の買い戻し」

市川レポート(No.151)「5月の売り逃げ」と「9月の買い戻し」

  • 米国では過去、5月に株を売って9月に買い戻す戦略は良好なパフォーマンスとなった。
  • 日本では過去、4月に株を売って10月に買い戻す戦略が良好なパフォーマンスとなった。
  • 必ずしも将来の値動きは保証されないが、これらの特性を考慮し10月相場を見極めたい。

米国では過去、5月に株を売って9月に買い戻す戦略は良好なパフォーマンスとなった

 4月21日付けのレポートでは、ウォールストリートの相場格言「5月に売って市場から立ち去れ(Sell in May and go away)」をとりあげました。ただこの文言は格言の一部に過ぎず、正確には「5月に売って市場から立ち去れ。そしてセント・レジャーズ・デイ(すなわち9月第2土曜日)まで市場に戻ってくるな(Don’t come back until St. Leger’s day)」であることをお話ししました。

 またレポートではダウ工業株30種平均のデータを用い、5月に売って9月に買い戻した場合のパフォーマンスについて過去30年分を試算しました。その結果、Buy and hold戦略(買った後は保有し続ける戦略)のパフォーマンスよりも良好であったことが確認されました。そこで今回は日経平均株価について同様の試算を行い、日本でも格言に基づく戦略が有効であったか否かを検証します。  

日本では過去、4月に株を売って10月に買い戻す戦略が良好なパフォーマンスとなった

 1985年から2014年までの過去30年間における月間騰落率の平均値は、ダウ工業株30種平均が図表1、日経平均株価は図表2の通りです。図表1をみると、ダウ工業株30種平均は1年のうち6月、8月、9月は平均的にパフォーマンスが悪く、10月から翌年5月までは平均的に良い月が続いていることが分かります。そのため5月の上昇時に株を売って9月の下落時に株を買えという格言の妥当性は、過去の値動きによってある程度確認できます。 

 一方、図表2をみると、日経平均株価には6月から10月までのパフォーマンスが悪く、11月から翌年5月までは良いという傾向がうかがえます。なお5月に上昇した年は、過去30年間で16回、下落は14回でしたので、勝率は53.3%です。これに対し4月の上昇は、それぞれ17回、13回で勝率は56.7%となりますので、日本株については「4月の売り逃げ」と「10月の買い戻し」の方が有効な戦略となる可能性があります。 

必ずしも将来の値動きは保証されないが、これらの特性を考慮し10月相場を見極めたい

 そこで過去30年間の日経平均株価について、9月末から翌年5月末までの騰落率と5月末から9月末までの騰落率の平均値を計算してみると、それぞれ+6.2%、-2.2%となり、前者の年率換算は9.4%でした。さらに10月末から翌年4月末までの騰落率と4月末から10月末までの騰落率の平均値を計算すると、それぞれ+7.3%、-3.2%で、前者の年率換算は15.1%となりました。やはり日本では、「5月の売り逃げ」と「9月の買い戻し」よりも、「4月の売り逃げ」と「10月の買い戻し」の方が有効な戦略であったことが分かりました。 

 なお1984年末から2014年末までの騰落率を年率換算すると+1.4%でしたので、これをBuy and hold戦略のパフォーマンスと考えると、過去の値動きを用いて単純計算する限り、日本においても相場格言を応用した売買戦略の方が良好な成果を得られたことになります。いずれの試算も過去の実績に基づくもので、必ずしも将来の値動きを保証するものではありませんが、日本株にはこのような特性があることを考慮しつつ10月相場を見極めたいと思います。

151001 図表1151001 図表2

 (2015年10月1日)

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